「子連れで離婚なんてバカ女」という書き込みで感じたこと【シングルマザー、家を買う/32章・後編】
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相変わらず電話口から聴こえるサッササッサとタロットが切る音と、呉龍宅の窓の外からの生活感あふれる音をBGMに数分待つと、「お待たせしました~」と結果を伝えてくれた。
「う~ん。たしかに今は参っていますね~。心が病んでいるカードがでていますよ」
だろうね。そうだろうね。ていうか、そう言ったよね、私。
「そ、そうなんですよ。だから、対処法を教えてもらいたいんですが……」
この対処法を占い師に聞くなんて完全におかしい。でも、呉龍は答えてくれる。なぜなら、お金を払っているから!
「そうだなぁ。ネット、見なければいいんじゃない?」
え! それ、私の歯科衛生士の友達も同じこと言ってた! しかも無料で!
「あ、そうですか……。そうですよね。」
そう納得のいかない声で頷くと、呉龍は続けてこう言ったのだ。
「大丈夫。吉田さんはきっと乗り越えますよ!」
「このアドバイス、占いとは全く関係ない」と心の中で確信しながらも、呉龍がそう言うなら間違いないだろうと思い込むことにした。そうだ、大丈夫。私はきっと乗り越える。
完全に不確かな呉龍のアドバイスを胸に、私はもうむやみに書き込みを覗かないようにした。好意的なメッセージはちゃんとTwitterなどで名を名乗ってからくれるのだから、それを受け取ることにしよう。
そう心に決めた数日後。思わぬところからメールが来た。
「なんか可奈ちゃんの連載にひどい書き込みされているけど大丈夫?」
友人に悪気はないのだろうが、気にしないと決めて数日も経たないうちに、第三者から知らせがくるようになってしまった。これはきっと見なければいけないものなのだろう。私は教えてもらった書き込みを見ることにした。すると、そこにはかなりヘビーな内容が書いてあったのだ。
「こんなに小さな子供2人を抱えて離婚なんてバカ女。浮気ぐらい耐えればいいのに。しかも障がいがあるのにわざわざ離婚して、子供のことを本当に何も考えてない!」
……そうですね、ほんとごもっともです。すると、次にはこんなことが書いてあったのだ。
「こんな浮気するような旦那なら、ATMだと思って他に男でも作ってうまくやればいいんだよ! 自分のことを過信しすぎてるからバカな道を選んで。そんな潔く離婚せずに、自分のことだけ考えてうまくやればいいのに!」
……あれ、これって、すごく心配されてる? さらに、アドバイスまでくれている。しかも、連載をちゃんと読んでくれている。バカ女呼ばわりしながらも、愛が溢れている!
なんだろう、きっとこの人はすごく不器用なのかしら……。言い方を変えれば、
「最初から離婚なんて潔く選ばなくても、旦那を上手く使って様子をみながら自分のいい方向を選べばいいんじゃない?」
ってアドバイスをくれていたのだ。
私はそんな風に器用に気持ちを持っていくことが出来ないので離婚を選んだのだが、きっと、そうやって上手くやっている家族もいるんだろう。果たしてそれが“上手く”なのかは私にはわからないが。
とはいえ、ネガティブな書き込みはやはり、心を病む。私は呉龍のアドバイス通り、ネガティブな書き込みはみないと心に誓ったのであった。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。

ネガティブな書き込みは不器用すぎる愛!?

- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず保育園では人気者
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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