ヤラセでもいい。壁ドン体験は、女として発見がある!
<寄稿/和久井香菜子>
何年か前まで、「お姫様だっこ」は女子の憧れだった。なんか愛されてる感たっぷりのだっこ、一度はやってもらいたいものだった。でもこれには障害が多すぎるのだ。女子の体重、男性の筋力、パンチラの心配……。
それに引き替え「壁ドン」は手軽だ。体重を気にすることも、パンチラの心配もなく、身体の密着もないから(接近はするけど)、そのあとどうとでもなる。ブームも自明である。
しかし憧れはするけれど、なかなか体験できないのも事実である。毎日どこにでも落ちてるシチュエーションじゃないからこその憧れなんだけど。
そんな憧れの「壁ドン」をしてくれるということで、話題になったイベントがある。2014年東京ゲームショウの「ボルテージ」(恋愛ドラマアプリに強いゲームメーカー)のブースだ。多くの女子たちが壁ドン目当てに並び、心痺れさせているという記事を読んで思った。
「壁ドンは、そこに至るまでの相手との信頼関係や交流があってこそ嬉しいのだ。そんなマニュアル化された行為に萌えるものか」と。
2015年東京ゲームショウ(9月17~20日)、ボルテージは去年よりパワーアップされたサービスで迎え撃つという。よし、それならこちらもその壁ドン体験してやろうじゃないか。
⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=356946
ここだっ!
ボルテージが提供していた実体験サービスは、『偽りの君とスキャンダル』『花より男子~F4とファーストキス~』『鏡の中のプリンセス Love Palace』の3つ。この際全部体験してやるぜ!
『偽りの君とスキャンダル』はシルエットで気になった方のイケメンを選ぶと、カーテンが開き、イケメンがやってくるというもの。
髪の毛がロン毛っぽかったので右のお兄さんにしました。
……スゲーイケメンだ!!! なにこれ、スゲーイケメンだよ?
「ステージの上から、おねーさんしか見えなかった。だから、おねーさんも、僕しか見ちゃ、ダメだよ?」
あははははははは! なんか大爆笑してしまった、ごめんなさい。
次は『花より男子~F4とファーストキス~』だ。英徳学園の校門に入ると、ふたりのイケメンが「壁ドンさせていただいてもよろしいですか?」と言って、追い詰めてくる。近い近い、顔が近い!!
⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=356949
無言で壁ドンされ、間が持たなくてまたもや笑うしかない。ブーっ!
『鏡の中のプリンセス Love Palace』は、イケメンとふたりっきりになれる場所だ。何枚ものカーテンをめくって通路を進み、突き当たりで青い扉かピンクの扉かを選ぶように指示される。
青を選ぶと、オラオラ系が待っていた。扉を開けた途端、
「遅い、何をやってたんだ!」と怒られた。
「えっ……(カーテンくぐってから、写真撮ったりしてたから遅かったかな?)。し、仕事です……」
なんかつい本当のことを答えている!
「仕事? 仕事のことなんか忘れて俺のことだけ考えろ!」
「はい……」
仕事で来てんだからやりとりを録音しようと思ってたのに、ホントに仕事を忘れて録音しそびれた。よってこのサービスは再現度が低いです。
そして壁ドン、耳元でなんか言われた(茫然自失で忘れました)。
言われるままに素直に回答。なんかもう唯々諾々
ピンクの扉のイケメンは王子様風
耳に花を挿してくれます。や、やめて耳弱いから。
ここで気付いたことがある。自分がほんっっとに、オラオラ系に弱いってことに。
AVエキストラのバイトとかしてるくせに自分の恋愛には疎く、基本的にものすごくオクテなのだ。その上、自己評価が低い。よって今までの人生、付き合ってきたのは割とオラオラ系が多いのである。そうじゃなければ恋愛関係へと発展しないからだ。
そして毎回、オラオラの横暴に疲れ果てて別れを迎えているのだ。……これはなんとかしなければ、また同じ不幸を繰り返すだろう。
ゲイバーに行ったとき、後ろから胸を揉みしだかれて、ギャーとか叫んで身を固くしたことがある。その時に思った。「こういうとき、『ホラお揉み』などと胸を差し出すくらいの度量が欲しい」と。
ここでも、イケメンに顔を寄せられて緊張している場合ではない。向こうはいいこと言って来てるんだから、そこでガブリと食らいつくくらいの食欲がなければいけないのではないか。顔を横に向ければ唇が当たるくらいの距離にイケメンの顔があるのだ。唇を突き出す、腰に手を回すくらいの勇気がなくてどうする。
皆さんお背も高くていらっしゃいました
めくるめくイケメンの嵐に遭い、思った。……イヤじゃない。壁ドンに至るまでの相手との信頼関係や交流とか全然なくても、イヤじゃなかった!
恋愛のプロセスは、相手の欠点や人間くささに対して寛容になる効果があるのだろう。よってその段階を踏んでいない場合、少しでもイケメンクオリティが落ちると気持ち悪いと思う。
しかし彼らのレベルはハンパなく高くて無味無臭、現実味がない。実際に付き合ってどうこうしたら面倒くさいことが山ほどあるんだろうけど、シチュエーションだけならおいしいとこ取りだ。
さすが乙女ゲームのボルテージ、女心をよくわかっている。『鏡の中のプリンセス』の裏側通路には、ミントのタブレットが置いてあった。顔を大接近させるにあたり、イケメンたちがかなりエチケットに気を配っていることもうかがえた。
仕事とはいえ1日に何百人もの女子に愛想を振りまくのも楽じゃないだろうとか憐憫の情すら湧いてくる。
そして自分のウィークポイントも明確になった。来年もボルテージはサービスを展開してくれるのだろうか。……来年は負けるものか。イケメンの顎をなでる「顎クイ返し」くらいできるようにレベルアップしておきたい。
こうしてこの1年の抱負が決まった。みなさん、壁ドン体験は自分の人生が見えますよ。この手の疑似体験は、自分を知り、心を強くするのに大変お勧めです。
各コーナーは長蛇の列で2時間待ちのことも。幕張まで片道2時間、体験の待ち時間で2時間(×体験したいコーナー分)、帰りで2時間と、軽く6時間はかかっちゃうけど、発見の大きさを考えたらむしろ短いくらいでした!
<TEXT/和久井香菜子>
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はじめての壁ドン体験



オラオラ系に弱い自分を発見






和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表