東京オリンピックは大丈夫?障がい者ウェルカムの合コンで痛感した問題
10月17日に鎌倉で開催された障がい者ウェルカムの合コンに参加してきました。
健常者も障がい者も(こういう区別はあまり好きじゃないですが)自由に参加できる会です。そこで発見した、大きな問題をお話ししたいと思います。
昼の12時に鎌倉駅に集合でした。そこから歩いて昼食会場まで向かいます。少し遠回りをして、鎌倉の名所を案内してもらいました。
これまで、車いすユーザーのお友達と出かけたことはありますが、大勢で移動したことはありません。この日は総勢20名ほど、そのうち10名が車いすユーザーでした。
そこで気付いたのが、まずバリアフリーの多機能トイレが少ないこと。
たいていの公衆トイレには多機能トイレが1つしかありません。そうなると、何人もの車いすユーザーがいる場合、順番待ちでものすごく時間がかかりました。
一般のトイレでも、通路が広ければ使える人もいるので、多機能トイレを増やすだけでなく、公共の施設全体について考える必要があるのかもしれません。
車いすは、路面の状況がダイレクトに歩行に影響します。路面の状況がよくなければ歩みは遅くなりますし、急な坂道は上りも下りも一苦労です。もちろん大きな段差は上れません。観光がてら、写真撮影がてら移動したこともありますが、予定していた時間の倍以上かかりました。
⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=389804
ジャリ道は車いすの天敵。車輪が空回りしたり、小石をはじいたりして、いつもより数十倍力がいります。
5年後には、東京オリンピック・パラリンピックがやってきます。パラリンピックには、出場選手の他にも、大勢の障がい者が観戦に来るでしょう。予想では1万人とも2万人ともいわれているそうです。
そのときに、今のような日本の状況で対応ができるのでしょうか。たった10名でこうです。各所で大混雑、大混乱が起きるだろうことは容易に想像がつきました。
小さな穴や突起があった場合、簡単に「またげばいいや」ということができません。路面を整備することも、車いすやベビーカーを使う人にとって重要です。そしてそうした配慮は、渋滞や混雑を緩和することにもなり、結果的には私たちの生活にもメリットとなって返ってくるでしょう。
参加者のかたたちに参加の理由を聞いてみると、「あまり障がい者同士の交流がない」「普段は健常者と行動することが多い」ため、お友達を含めた出会いがあればいいなと思った、という方が多数でした。
また「出かける前には事前に自分が行ける場所かどうか調べる必要がある」「いつも同じ場所で行動しがち」という意見もたくさん聞きました。その点、行き先の状況を理解している人が誘導してくれるのはたいへん心強いのだそうです。
今回のイベントは、正直言って課題をたくさん感じました。合コンなのに自己紹介タイムがなかったし……。
でも、こういった試み自体は増えていくといいし、これからの発展に期待したいと思います。
数10年前まで、眼鏡は単なる「視力補助器」でした。眼鏡は視力が悪いことを知らしめるアイテムで、恥ずかしいと感じる人すらいました。それが今やイケメンや美少女の象徴になり、お洒落のひとつです。
車いすや白杖も、きっといつか社会で当たり前のアイテムになり、個性のひとつとして受け入れられるようになるでしょう。健常者、障がい者分け隔てのないこうしたイベントは、その足がかりになるはずです。
当日は、たくさんのボランティアスタッフによって運営されていました。参加するのでもいいですし、スタッフとしてお手伝いするのでもいいですし、ぜひ体験してみて欲しいと思います。普段は見逃してしまうような小さなことに、たくさん気付くでしょう。
「障がい者はかわいそうだから手を差し伸べようよ」と言っているのではありません。健康な身体には保障がないのです。病気になったり怪我をしたりして、自分の身体のなにかが失われる可能性は誰にでもあります。
老いれば当然身体の自由は利きにくくなります。親兄弟や子ども、友人が障害を持つかもしれません。そうしたときに、居場所があること、社会生活が営めることを知っていたら、それは大きな救いになるのだと思うのです。
<TEXT/和久井香菜子>
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和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表