Lifestyle

「自分のため」だけに生きるのは虚しい…地域猫が教えてくれたこと

 人と猫がハッピーに暮らす街にするには、どうすればいいのか?「むさしの地域猫の会」の代表・西村麻衣子さんに話を伺いました。インタビュアーは、『迷子のミーちゃん ~地域猫と商店街再生の物語~』(映画『先生と迷い猫』の原案本)の著者である木附千晶さんです。

きっかけは3.11だった



地域猫木附:地域猫活動は、飼い主のいない猫たちに毎日エサをあげたり、不妊・去勢手術をしたり、保護して里親を探したりと、ほんとうに大変ですよね。

 いくら猫好きでも、実際にやるのはハードルが高いのでは?

 私も公園で捨てられていたコ、怪我をして家の庭に迷い込んだコ、別荘地に捨てられていたコなど10匹以上を保護してきましたが、地域猫活動まではやれませんでした。

 そもそも西村さんはなぜ活動をはじめたんですか?

西村:3.11の後、被災地の動物たちの悲惨な様子が伝えられましたよね。そういうコを助けるために奮闘している人もいるのに「私は自分の生活だけでいっぱいいっぱいで何もできない」と悶々としていたとき、たまたま家の近所に猫の親子が現れたんです。

 その親子をどうにかして救いたいと思って「むさしの地域猫の会」に連絡したのがきっかけでした。

木附:たとえ親がいても外で子猫が生きるのは本当に大変ですもんね。寒さや飢え、カラスの攻撃などいろいろありますから。「飼い主のいない猫の寿命は4年程度」と聞いたことがあります。

11月15日譲渡会

同会が行っている譲渡会。11月15日の会では、44匹が参加して16匹に譲渡の申し込みがあった

西村:飼い主のいない猫の現実は過酷です。子猫だけではありません。事故に遭いやすいし虐待も多いです。

木附:今年になってから都内で虐待されてた死んだと思われる猫のニュースをよく聞きます。新聞(『日経新聞』10月17日付)で「2015年4月以降に17件」という記事を読みました。

西村:猫の保護主さんたちも里親詐欺(※)には気を付けています。譲渡の際はきっちり話をして「一生家族の一員として大切にしてくれるかどうか」を判断しないと。

木附:やっぱり完全室内飼育が条件ですか?

西村:地域猫活動をすればするほど「もう外にいる猫は見たくない」と思うようになりました。

 怖い目に遭って人におびえるコや病気で目やにが出て目も開けられないコ、だれにも気づいてもらえずひっそりと息を引き取るコ…一生懸命生きようとする小さな命に、そんな思いはさせたくありません。

地域猫2

同会で保護した子猫。こんなにキレイな目なのに全盲だそう…子猫が風邪などで目が見えなくなることは多い

人が苦手だったけれど…



木附:そういうコたちを見るのはとっても辛いと思うのですが、どうして西村さんは地域猫活動を続けるんですか?

西村:都会で暮らしているとどうしても「自分のため」「生活のため」しか考えられなくなりがちです。でも地域猫活動をしていると「私も誰かのために生きてる」っていう充実感があります。

 私はずっと人が苦手だったのですが、この活動をしていて目の前にある命を救うために奮闘するすてきな人と出会う機会が増え、「人って捨てたものではないな」と思うようになりました。

木附:何かを「手に入れる」より「与える」ことが人に幸せをもたらしてくれるということなんでしょう。

 でも、おっしゃるように世知辛い都会で絶えず競争にさらされていると、なかなかその大切さに気がつけません。そんなふうに見失いがちな「人として本当に豊かに生きるのはどういことか」を教えてくれるのが地域猫活動なんだと思います。

西村さん

「むさしの地域猫の会」代表の西村さん

※里親詐欺
販売したり虐待する目的で、譲渡会に行って動物を譲り受けようとする人たち

【むさしの地域猫の会とは】
東京都武蔵野市を中心に、武蔵野市と協働で地域猫活動を推進しているボランティア団体。市の補助、会費、寄付、募金、チャリティグッズの販売などで運営されている。HPには里親募集中の猫写真も
【むさしの地域猫の会HP】http://www.musashinoneko.com/

※ノラ猫との付き合い方も一読を!
http://www.musashinoneko.com/%E3%83%8E%E3%83%A9%E7%8C%ABq-a/
 困ったら、自分の住む地域のボランティアグループを探して相談しましょう!

<TEXT/木附千晶>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】

木附千晶
臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』など。
迷子のミーちゃん~地域猫と商店街再生のものがたり~

再開発が進んで寂れてしまった、日本のどこにでもあるような商店街に住み着いていた地域猫のミーちゃん。ところがある日、ミーちゃんは行方不明になってしまいます。いなくなってからわかった、小さな存在が私たちに教えてくれたこと…。




あなたにおすすめ