アイドルフェスで才能が開花!? 完璧すぎる息子のオタ芸【シングルマザー、家を買う/39章・後編】
⇒【前編】 息子(5歳)の特技が“オタ芸”と判明【シングルマザー、家を買う/39章】
さらにサイリウムを振るようなライブになると、ビックリするほどリズム感よく振りはじめ、バラードになるとゆったりと左右に振り始める。しかもその表情はとても悦に入っており、誰よりも楽しんでいることが見て取れるのだ。
驚くべきところは、MCの時にアーティストが静かになると、そこだけ空気を読んで静かにしているところ。普段なら関係なく大声を発したりするのに、この場の空気だけは壊しちゃいけないと思うのだろうか。
そんな息子が一番の才能を発揮したのが、「TOKYO IDOL FESTIVAL」だった。アイドルが100組以上登場する、お台場で行われるフェスなのだが、ここを訪れたとき、息子のテンションは異常だった。
まず、アイドルグループの小さなフラッグとサイリウムを両手に持った息子は、出てくるアイドルごとに大声で「オー!」と叫び、ジャンプし、さらにはオタクたちの「サイバー! ファイヤー!」という独特なコールに合わせて両手を振り始めたのだ。腰もしっかりと入っている。そして、煽るアイドルに対して、言葉の話せない息子は確実にいいリズムで「うりゃ!」「オイ!」と叫んだのだ。
え? いま、「うりゃ、おい」って言った?
このコールはオタクにとっての定番コールみたいなもの。自然と口にするような言葉ではない。しかし、この日、息子の脳に「うりゃ、おい」という言葉がすんなりと入ったのか、何度も何度もこのコールを連発するのだ。
ママには「あーい」しか言わないのに……!
あまりの衝撃とショック、そして、新しい言葉を話せたという喜びが一気に溢れて、まったく自分の頭の中が整理できない状態だったが、まぁ、これも成長……そうだ、成長だということにしよう、と気持ちを入れ替えた。
息子は現在も、保育園から家に帰ると、ライブDVDから適当なものをピックアップして、勝手に再生する。洋服も自分ではうまく着られないのに、ライブDVDだけはすんなりと再生できるのだ。そしてサイリウムを持ち、踊り出す。そのせいで、我が家では毎晩、様々なジャンルのライブが開かれている。
……息子の“何か”とは、もしかしてオタクの才能なのかもしれない。まぁ、それなら楽しいからいいけど(笑)。息子の未来は、まだまだ無限に開かれているようだ。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。
息子は特技は“オタ芸”だった…


- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず保育園では人気者
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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