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「私たちがプロポーズされない理由」、謎のアラフォー著者に聞く

 いま注目を集めている本がある。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)。

 タイトルは未婚女性に向けた自己啓発本のようだが、その内容は独身男性のみならず、大きな意味でのコミュニケーション全体にかかわる示唆に富んでいる。この本がどのようにできあがったのか、著者であるジェーン・スーさん(1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト)にインタビューした。

「ジェーン・スー」とはこんな女であってだな……



――『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(以下『わたプロ』)出版以降、コラムニストとして注目を集めていますが、もともとは音楽畑で活躍されてきたんですよね?

ジェーン・スー

ジェーン・スーさん

ジェーン・スー(以下、スー):新卒でレコード会社に入って10年ぐらい。そのあといったん音楽業界を離れて、しばらくして歌詞を書く仕事を始めてアイドルグループのTomato n’ Pine(トマトゥンパイン)のプロデュースをやってきました。

――いま現在、メインの肩書きは何ですか?

スー:わからないんですよ。いまどうしようかと思って。一応コラムニストは一回やったことがあるから、(プロフィールには)入れておけということで入れておいたんですけど(笑)。

 音楽の仕事のほかにラジオも3年くらいやっています。どれもちゃんとした明確な結果が出ていないのでなんともっていう感じなんですけど。

 本当は「肩書きは何ですか」って聞かれるのが一番困るんですよね(笑)。結局は、とりあえず来た仕事来た仕事を断らずにやっていたら、これだけ雑多になってしまったというだけなんです。

ファミレスで女友達と話した「プロポーズされない理由」



――現在は、すっかりコラムニストとして注目されているわけですが、もともとは音楽畑だった。でもいきなりは書けませんよね。今までも文章は書いてこられたのでしょうか?

スー:2003~2005年頃にmixiの日記を全体公開にして書いていたら、「雑誌が新しく立ち上がるのでコラムを書いてみませんか」と言われて、幻冬舎さんの『GINGER』という雑誌で書き始めたのが最初です。それが2006年頃のことで、でも最初から「原稿に品がない。もうちょっとマイルドにしてください」と言われてしまうような……とはいえ、私としては『わたプロ』とは違うマイルドな感じの原稿を書いていたつもりでした。それが最初の原稿の仕事だったのですが、そこから先は特に話もつながらなかった(笑)。

 で、歌詞を書く仕事を始めて、アイドルグループのTomato n’ Pine(トマトゥンパイン)のプロデュースをやっていたのですが、文章を書く仕事はしたいなと思っていました。

――もともと書くという行為をやりたいという意志はあったのですか?

スー:いやいや、さっきも言ったみたく頭のネジがはずれたような日記を書いていただけだったので「私、書きたい!」って言っても、それでどないやねん!て話なんですけどね。

 それでも、(書いている文章を)見せないと仕事は来ないなと思ってブログを始めました。『10匹のコブタちゃん』(フジテレビ 2013年9月放送終了)みたいにメディアに出る仕事をしていても、明らかにそこで私という人間が伝わることはないということはやる前からわかっていたので(笑)。芸人さんの横でクスクス笑う役だろうなと思ったので、興味を持ってくれた人が検索したときに見てもらえるものがあったらいいなと思ってました。

――続いて『わたプロ』出版に至った経緯を教えて下さい。

スー:ブログを始めたらFacebookとかブログに載せているメールアドレスとかツイッターとかありとあらゆるところから予想以上にワーッといっぱい出版の話をいただいたのですが、そのうちのひとつがポプラ社さんで、担当の増田さんから熱いお手紙や暴走気味の企画書をいただきまして。

「とりあえず一回お会いしましょう」ということで増田さんとお会いして、面白かったので「じゃあやるか」みたいな話になったんですけど……その時のブログって10本しか書いていなくて、「そんなブログのブログ本をいま作ってもな」という迷いもありました。

 増田さんが若くて、これから入っていく森というか密林的なところがよく見えていなかったので、なんか「そういうのをやりましょうかね」みたいなことも話していました。とにかく書く仕事がしたいと言っていたわりにはネタがなかったんです。なのでいろいろ考えて、7,8年前に友達と作って取っておいた「私たちがプロポーズされない理由リスト」を出してきて増田さんに見せたら、「面白いからやりましょう」ということになったんです。

――友達と出し合って作ったんですか?

スー:そうですね。しかもファミレスでやりました。

――ちなみにファミレスは何派ですか?

スー:ファミレスだと本当はロイヤルホスト派なんですけど、ロイホは数が少ないんですよね。昔実家のそばにあったのでよく通っていたんですけど、いま住んでいるところにはないのでもっぱらジョナサンです。だから『わたプロ』はジョナサンでできたと言っても過言ではないです。

――「プロポーズされない理由リスト」についても聞きたいのですが、結構前に作成されたものですよね。よく取っておきましたよね。

スー:当時は「くっだらないからこれ取っておこう!」「いつか本にしよう本に!」って、ノリで友達と話していました。何の確約もないからこそ言えるようなものだったんですけど、つい面白くて持ち続けていたんです。

――内容はかなりブラッシュアップされているのでしょうか?それとも当時のまま?

スー:相当ブラッシュアップしましたね。本当は100以上あったんですよ。たしか130くらいありました。省いたというよりは内容が被っているものをくっつけたほうが多かったですね。省いたのは何だったかな……彼氏がゲイだったくらいかな。

――この本は101の項目を章で区切ったりしないで頭から全部流し込んでいますよね。これってある意味斬新な章立てだなと思ったんですけど。

スー:みんなそういうタイトルでも中はそうじゃないと思っていますからね。買ってみたら本当に101個だったっていう(笑)。

――増田さんはリストを見たとき、どのあたりで「これは本としていけると判断されたんですか?

ポプラ社・増田:スーさんからいただいたリストの順番が完璧だったんです。「もともと彼に結婚願望がない」「にもかかわらず、『私となら考えを変えてくれるかも』などと期待している」や、「彼を元彼と比べて寸評したことがある」「彼をあなたの父親と比べて寸評したことがある」みたいに対になっているものが何個もあって、リズムがすごく面白くてこれをそのまま載せたいくらいの感じでした。

――それはすごいですね。最初から考えていたんですか?

スー:いやいや、結局はお茶の場の笑いなので。
「ダメな男と付き合っている」「あるねー!」「なのに自分とだと変わってくれると思ってる」「あるねー!」そんなやりとりで「ゲラゲラ(笑)」みたいな感じの流れだったので、そうなっているだけなんです。

――『わたプロ』はリアル女子トークの中から自然に生まれてきた本なんですね。

スー:そうですね。完全にそうです。


本を出したぐらいじゃ人生なにも変わらんぞ



――Amazonのレビューがインタビューしている11月1日の時点で10件ついていますけど、全て好評価ですよね。マイナスの評価がつかないことをどう捉えていますか?

スー:どうなんですかね。アンチの声がないというのは、まだそんなに広く読まれていないというだけじゃないですか。もうちょっと広がらないとなと思っています。出ているレビューの数がいくつであれ、マイナスの評価がついてないのは単純に外の人に広がっていないというだけの話だと思います。

 多くの人に読んでほしいというのはもちろんあるんですけど、もっと広がるはずだということでは全然なくて、ずっと宣伝の仕事をやってきたので、アンチが出てきていないのは単純に広がっていないだけだという経験則からの話ですね。

――アンチまで届くということも狙っていきたいですか?

スー:それはないです。アンチの人たちの神経を逆撫でさせようと思ったら全然違う書き方をしますし。単純に届く人に届いてくれればいいということですね。これが何かのきっかけで広がってアンチの人が増える分届く人も増えたら、それはすごく喜ばしいことだと思うんです。

 たまたまなのか私がすごくラッキーなのか、読者の人たちの読解力がすごくあって嬉しいという思いが大きいですね。褒めてくれるというよりも、何を言わんとしていたかがすごく伝わっているなというのをサイン会で気がついたので。それはすごく嬉しいです。

 男女比は実際のラジオのリスナーさんは半々ぐらいだと思うのですが、サイン会やコミュニティFMのsora×niwa(ソラトニワ)に足を運んでくれるのは7割が男性ですね。

――本が出てそれが売れて話題になってファンができて、スーさんの立ち位置も変わってきたと思うのですが、ご自身ではどう考えていらっしゃいますか?

スー:テレビに積極的に出ていかないかぎり私生活が脅かされることもないと思います。食べ物をたくさんいただくので太らないようにしなきゃというのがいま一番気になるところですね。食べ物関連のツイートをよくしているからだと思うんですけど、サイン会やラジオへの差し入れですごく美味しいものをすごくたくさんもらうので。お菓子とか帰省土産のうなぎのレトルトとか、とにかく美味しいものを。

 食べきれないのにちょっとずつちょっとずつ食べているから「これはまずいな」と思って(笑)。このあいだも欲張ってサイン会でいただいたものを全部持って帰ったんですけど、それをずっと食べていたら本当に体がむくんできて、「死ぬなこれ……そろそろ気をつけないと肥満死するぞ」と思っています。

――自分の過去をオープンにして評価されている現状をどう思ってらっしゃいますか?

スー:優しい世の中だなと思いますよ本当に。いい世の中になったなと思います。「いい世の中」とは「私にとって都合のいい世の中」という意味ですけど。
(一同爆笑)

――スーさんが『ニュースの深層』(CSのテレ朝チャンネル2)に出演されたとき、司会のベテランアナウンサーの吉澤一彦さんがずっと微妙な顔をしていましたよね(笑)。

スー:もうずっと意気消沈。どんどん沈んでいって、「うへぇ、お腹いっぱい」みたいになっていて面白かったですね。あ、この人「もういいや」って顔になっているなって。お腹いっぱいだなというのはよくわかりました。
一方のキャスターの高橋美佐子さんはどんどんテンションが上がっていきましたけど。

――吉澤アナみたいな反応をする男性もいるのかなと予測されていましたか?

スー:ある一定の年齢層、50歳以上とかの方はそうじゃないですかね。でも若い子でも女が口を開いている(公に発言をする)だけで嫌な人はいっぱいいますから。

――吉澤アナがどうこうという話ではなく、自分たちの結婚とかそういう部分を全面に出してくることを鼻持ちならないと思う人たちの声が聞こえてくることはありましたか?

スー:ないですね。面倒くさいから誰も絡んでこないんだと思います。

――そういう意味で言うと、話題になったことで自分自身に変化があったとか、まわりの見る目が変わったということはなさそうですね。

スー:変わってないです。何も変わっていないですよ。変化があったとすれば自分の著作が世に出たというだけです。その本の存在を知った人が買ってくれたというだけだと思うので。それこそ「これくらいじゃ何も変わらないんだ」という事例としてしっかり書いていただけるとありがたいです(笑)。

「本当に何も変わらないんです~」みたいな(建前の)話じゃなくて、「2万5000部の本が出たくらいじゃ人生何も変わらんぞ!」という現実の話として。

⇒【後編】に続く「何歳までに結婚、とか決める人生は“死に待ち”だ」(http://joshi-spa.jp/47974)

<TEXT/丸山ゴンザレス>




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