ディーン・フジオカの歌・MVはダサすぎて心地いい…岡崎体育のパロディどおり!
俳優のディーン・フジオカが7月5日にリリースした初の全国盤CD『Permanent Vacation/Unchained Melody』が、いまネット上で話題になっています。といっても、どちらかと言えばあまり嬉しくない騒がれ方なのですが……。
音楽番組に出演すると、期待とは裏腹に「ラップがダサかった」とか「歌はやめた方がいい」などの声がSNS上にあがり、複数のネットニュースがそれを記事にしていました。
筆者もそう感じています。「Permanent Vacation」、「Unchained Melody」のいずれも、甲乙つけがたくダサい。曲を説明するディーン様からはEDMだとかのワードが出て来て、実際に電子音が必要以上にシュワシュワ言っているのですが、全くもって最先端っぽくないのです。
⇒【YouTube】はコチラ DEAN FUJIOKA「Permanent Vacation」Music Video (Short ver.) http://youtu.be/XuB_3Kv1IVc
けれども、それで不快な気分になるかと言われると、そうではないところが面白いのですね。なんだかクセになってしまう。気が付けば、<朝が来たらどこへ向かうのか きっと俺には分からないまま>と口ずさみながら床に就いている。
たとえるなら、織田裕二の「All My Treasures」のような浸透力があるのです。
ダサいのにクセになる。これは一体どうしてだろう、と考えていて思い出したのが、岡崎体育のことでした。ディーン・フジオカの曲やMVって、岡崎体育がパロディでやってみせた型にバッチリとハマっているんですよね。つまりJポップの伝統芸を踏襲しているわけです。
⇒【YouTube】はコチラ 岡崎体育 『MUSIC VIDEO』Music Video http://youtu.be/fTwAz1JC4yI
ためしに「Permanent Vacation」のあとに、「Explain」(岡崎体育)を聞いてみましょう。
<ここからサビ 俺は今歌ってるんだよってみんなに届いてほしくて でも歌詞にはメッセージ性なんて全然なくて>
(「Explain」/岡崎体育)
これって、まさに<朝が来たらどこへ向かうのか>じゃありません? まったくと言っていいほど意味はないのに、戦争に勝利したぐらいの勢いで高らかに歌い上げている。岡崎体育の「Explain」や「感情のピクセル」は、そのおかしさだけで曲が作れてしまうと証明してみせたわけですね。
そんな岡崎体育を一躍有名にしたのが、“MVあるある”をそのまま曲にしてしまった「MUSIC VIDEO」なのですが、これはさすがにディーン様のスケール感には及ばなかったようです。
「Permanent Vacation」のMVで、ディーン・フジオカは黒地に金の刺繍が施されたマイケル・ジャクソンのお古のような衣装で現れたかと思えば、突如として馬にまたがり海岸線を疾走するシーンが挿入される。林道を駆け抜ける金正日を思い出しました。
サイケデリックな画像が少々あるほかは、やたら海へダイブするディーン・フジオカのスローモーションが繰り返される。
これも大まかに言えば“MVあるある”の一種で、ディーン・フジオカをご堪能くださいといったタイプの作風なのですが、ここまで突き抜けた映像は久々です。かつて高層ビルの屋上で歌う華原朋美や、ヘリが旋回するSIAM SHADEなど色々ありましたが、それらと違う点は、ディーン様はスタイリッシュ過ぎてダサい。でもそんなところにアーティストとしての器の大きさを感じるわけです。
さてこの音楽活動やビジュアル戦略に、どれだけディーン・フジオカの意見が反映されているのでしょうか? テレビでトークする姿を見る限りでは、恐らく何も考えてないような……。
ただ、1から10までアイデアを出していたらそれもそれで面白いと思わせるあたり、ディーン・フジオカはなかなか奥が深いと感じるのでした。
<TEXT/音楽批評・石黒隆之>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
そのダサさが、心地よくなってくる…
岡崎体育がパロディにした「あるある」どおり
これを真顔でやれるディーン・フジオカは天然だ
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4