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KinKi Kidsが予想以上にお見事だった、ライブ番組「MTV Unplugged」

 今年デビュー20周年のKinKi Kidsが精力的に活動しています。7月12日には久保田利伸が作曲を手掛けた新曲「The Red Light」をリリースし、15、16日には横浜スタジアムでライブを行いました。突発性難聴が完治していない剛は映像での出演だったそうで、まだ心配しているファンも多いことでしょう。

KinKi Kidsのファンじゃなくても感心する出来栄えだった

 さて、これらに先がけて収録された『MTV Unplugged』の放送があったのですが、これが特に彼らのファンではない筆者も思わず見入ってしまう出来栄えでした。演奏のクオリティ、原曲の良さを活かしたアレンジ、それらにとってつけた感がなく、躍動感のあるまっとうな音楽として鳴っていたからです。 MTV Unplugged<※編集部注「MTV Unplugged(アンプラグド)」=アメリカの音楽チャンネル「MTV」が1989年から放送している看板番組。“電気”を最低限しか使わないアコースティックなライブで、ポール・マッカートニーやエリック・クラプトンをはじめ超一流アーティストが多数出演している。日本人ではCHAGE&ASKAが海外版に出演、その他はMTVジャパン制作版に出演している>  こうしたアコースティックライブではボーカリストの実力とバンドのレベルが一致せず、ちぐはぐに聞こえるケースがままあります。たとえるなら、ものすごい高価な服なのにサイズ違いとか色が合っていないとかで残念になってしまう感じですね。しかし、KinKi Kidsのアンプラグドにはそうした違和感はなく、剛と光一の2人に場違いな雰囲気は全くありませんでした。  特に「硝子の少年」での歌とストリングス(弦楽器)との絡みはお見事。きちんと音楽の会話になっていました。だからフロントマンでありながら、全体の一部として収まる安心感があり心地よかったのでしょう。

KinKi Kids、20年の地固めがこれから花開く

 筆者が中学生ぐらいにアンプラグドブームがあったので、主要なシリーズはあらかた観てきたうえで判断いたします。ストリングスなどを入れた形式での最高傑作は、ロッド・スチュワート。これを100とすると、KinKi Kidsのアンプラグドは65ぐらい。しかし、CHAGE&ASKAは別格としても、邦楽アーティストでは間違いなくトップクラス。西野カナと肩を並べるパフォーマンスで、キャリア20年の地力を感じました。 ⇒【YouTube】はコチラ Rod Stewart – Maggie May [Live Unplugged Video] http://youtu.be/m2CQ0FvAZuw  そして今回のアンプラグドライブで強く感じたことがあります。それは、20年歌い続けてきたKinKi Kidsの2人が、ようやくスタートラインに立ったのではないかということ。もちろん今までの彼らが未熟だったわけではなく、むしろこれから長く歌い続けていくための基礎をこの20年で築いてきたのではないか、その修行の成果がいま目に見える形で現われ始めたという意味です。  入れ替わりが激しく、すぐに売れなければ消えてしまう今日のエンタメで、じっくり時間をかけてパフォーマーを育てるのは至難の業。そんな中、長年人気を保ちながら実力を蓄え、また違った味わいを発揮する2人の存在は、けっこう珍しいケースなのかもしれません。  でも何事も一朝一夕には成し得ないもの。このゆったりとした時間の感覚こそ、王道であってほしいものですよね。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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