【モードをリアルに着る！　Vol.11／小林直子】 　ディオールの2018年クルーズコレクションの新作バッグとして、タロットのモチーフが描かれたバッグを発表しました。 　この新作に描かれているタロットの図柄は、1970年代に、カレン・ヴォージェルとヴィッキー・ノーブルによる『Motherpeace』という円型のタロットデッキに描かれたものです。そのタロットのなかから「死神」「審判」「剣の5」という図柄が選ばれ、バッグにそのモチーフが描かれています。 　ディオールのクリエイティブ・ディレクターにマリア・グラツィア・キウリが就任したのが2017年の春夏コレクション。このときからディオールのコレクションには、タロットモチーフが繰り返しあらわれています。その理由は、ディオールの創始者であるクリスチャン・ディオールがタロット使いだったからです。

Dior Officialさん(@dior)がシェアした投稿 – 10月 4, 2016 at 3:52午後 PDT

　タロットには「星」「太陽」「死神」「運命の輪」などさまざまなモチーフがあり、それを知る者でないと、ぱっと見て何を意味するかはわかりません。 　例えばディオールの2017年の春夏コレクションのドレスにはザリガニが刺繍されていますが、ザリガニが素敵だからでも、かわいいからでもありません。タロットの「月」のカードには通常、ザリガニが描かれると決まっていますので、「月」をモチーフにするならば、ザリガニをセットでつけなければいけないのです。 　そうしてそれを知っている者だけが、ザリガニを見て、タロットの「月」であると認識できます。

Dior Officialさん(@dior)がシェアした投稿 – 2月 14, 2017 at 5:47午前 PST

　マリア・グラツィア・キウリによるディオールのファーストコレクションであらわれたドレスには、「世界」や「吊られた男」「恋人たち」といった図柄が刺繍されています。 　また、例えば2017年の秋のオートクチュールコレクションでは、現存する最古のタロットと言われるヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットから絵柄をとってくるなど、使われるタロットの絵柄もさまざまです。

Dior Officialさん(@dior)がシェアした投稿 – 7月 4, 2017 at 1:21午前 PDT

　この絵柄の選択は、もちろんデザイン的に使いたい、という考えもあるでしょうが、それだけとは思えません。タロットの絵柄に込められた意味についても考えて、選択しているだろうと推測できます。 「太陽」の図柄をドレスに刺繍することによって成功を、「星」の図柄をセーターに描くことによって願いが成就することをひっそりと意図し、それを着る者にも同じ意図を持つように促す…そんなふうに考えてモチーフが選ばれたのではないでしょうか。