乳がんの手術跡にアートなタトゥー、入浴着で温泉に…傷跡ケアの広がり
小林麻央さんが乳がんで亡くなったのは去年のこと。彼女の健気な姿に胸打たれながら、医療や検診について考えるきっかけとなった人は少なくないのではないでしょうか。
国立がん研究センターの統計によると、2013年の乳がん罹患者数は76,839人。乳がんで亡くなる人は年々増えていて、2016年には14,015人が亡くなっています(厚生労働省人口動態統計)。死亡率では大腸、肺、胃、膵臓に次いで5番目だとか。
一方で乳がんは、早期発見すれば予後のよいがんでもあるそうです。
しかし乳がん手術の傷跡が、心にも大きな傷となっている場合も少なくないようです。こうした海外の女性たちの一部が実践し始めたのが「乳房タトゥー」です。乳頭をタトゥーで作る技術もありますが、今注目されているのは、胸に美しい花や羽といったデザインを施し、全体をアートにして人に見せてしまう方法。
一方で日本では、温泉施設ではまだまだタトゥーを入れた人の入場が禁止されるなど、タトゥー文化に寛容とは言えません。
その代わり、入浴時に体をカバーする入浴着(バスタイムカバー)があるのをご存じでしょうか。着用したままお湯に入っても衛生上問題がなく、厚生労働省・国土交通省・総務省でもその公用性が認められているものです。全国の温泉施設や旅館でも使用が認められています。
乳がん用の入浴着「バスタイムカバー」を考案・販売しているのは、「ブライトアイズ」という会社。乳がん経験のある方が設立し、乳がん患者をサポートする各種商品を企画・販売しています(バスタイムカバーはオンラインショップで税抜3800円)。
病気によって大好きな温泉に行けなくなったり、ひとの視線が気になってリラックスできない、楽しめないというのは悲しいことです。
中には入浴着の存在を知らず、「服を着て入るなんて!」などと非難する人もいるそうです。せっかく楽しめると思って行った場所でそのように否定されたら、どれほど悲しいでしょうか。
入浴着に対する理解と認知が急がれます。
隠す文化と見せる文化、形は違いますが、目的は同じです。誰もが自分に誇りを持って、楽しく豊かな人生が歩める社会になりますように。
<TEXT/和久井香菜子>
海外では乳房タトゥーを入れる人たちも
乳房を失ってしまった喪失感を、タトゥーで飾って前向きに捉えようという試みです。それにしても、恥ずかしいどころかため息が出るほど美しいですね。Beautiful.
— Personal Ink (@Personal_Ink) 2017年10月8日
Two #pinktattoodays yesterday, four more today. More: https://t.co/r6IZyuRuNj #mastectomy #tattoo #breastcancer #boulder pic.twitter.com/jI7dt0Fny4
この乳房タトゥーを広めるべく活動しているのが、アメリカで2013年に設立されたNPO「P.ink」(ピンク)です。一人の乳がん女性とその親族が立ち上げ、乳がん女性とタトゥーアーティストとの橋渡しや、イベント「P.ink Day」などを行っています。#DiaContraelCancerdeMama artista ayudo a cubrir las marcas del #cancer de mama con tatuajes. Via @Personal_Ink pic.twitter.com/cFId4Ed8aa
— Salud y Medicinas (@saludymedicinas) 2015年10月19日
日本では入浴着が少しずつ広がる
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表