エアリーどころじゃない軽さ!富山銘菓「月世界」/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.20 富山県「月世界」】
今回のテーマ食品は受け取った時点で「おかしい」と思った。
異臭がしたとか開ける前から何かの汁が出ていたとかではない。
むしろ「何か入っているのか?」と思った。
異常に軽いのである。
少なくとも食品の重さではない。感触としては発泡スチロールが入っているとしか思えないのだ。
というわけで今回の食材は「発泡スチロール」である。
発泡スチロールは味は特にしないのだが、ご存知の通り発泡スチロールをこすり合わせると、生理的に不快な音がする。よって口に入れて噛むと、あの不快音がダイレクトに脳に響くため、食べ物としては☆1だ。
ただしあの音に対し性的興奮を感じるという者にとっては☆5、リピ確定である。
つまり発泡スチロールを食ったことがあるわけだが、今回送られてきたのは当然発泡スチロールではない。
今回のテーマは「月世界(つきせかい)」だ。
この月世界、20センチぐらいの箱に入っていたのだが、冗談ではなく箱の重さぐらいしか感じない。
開けて見ると、長方体の白い菓子が出てきた。装飾は一切ない。徹頭徹尾白い長方体だ。実にシンプルである。
落雁(らくがん)のようにも見えるが、落雁より遙(はる)かに軽い。
正直、第一印象では「パンチが効いてなさそうな菓子だ」と思った。霧か霞を食って生きている奴の主食、という感じがする。
しかし、食べてみると、想像以上にしっかりした甘味なのである。
まず、その軽さどおり、食感が非常にサクサクしている。しゃらくさい言い方をすればエアリーだ。
そして味だが、もちろんチョコや生クリームのようなバイオレンスな甘さがあるわけではない。だが失恋したての奴が「優しい味……」などと言うような気の抜けた甘さでもない。コクがある。
今回の食材は「発泡スチロール」である
第一印象では「パンチが効いてなさそうな菓子だ」
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