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W杯、ブーイング現場にいた日本人サポーターの複雑な想い/子連れ観戦記

 やったー! 南アフリカ大会以来8年ぶりに決勝トーナメント進出を決めた日本代表。ベルギー戦は2日(日本時間3日午前3時開始)に行われます。

 子連れで現地観戦している著者が、ロシアから第3戦・ポーランド戦の様子をレポートします。

 賛否両論だった日本代表のパス回し、そしてブーイングは、観客席でどう受け止められたのか?(ということを知りたい方は、本文前半を飛ばして、後半を見ていただければと思います)

ポーランド戦

JMPA代表撮影

暑さと虫が半端ない決戦の地


 決勝トーナメント進出を懸けた第3戦、ポーランドとの試合が行われるのはモスクワより950km南に位置するヴォルゴグラード。日差しは容赦ないし気温もえぐい。朝も早よから30度台後半の気温を叩き出し、こちらの体力をぐいぐい奪っていきます。

 しかも時折、コバエのような小さな虫が顔の周りにまとわりついて、耳や目の中に入ってくる。暑さも虫も、不快なことこの上ありません。

 Airbnbで押さえた宿に3回連続で一方的なキャンセルをくらってしまったので、仕方なく寝台列車で14時間かけ、当日に現地入りすることにしました。早朝の飛行機だと子どもを朝早く起こさなくてはなりませんが、朝に到着する列車を選べば子どもを寝かせておけるので、子連れにはむしろ「ビバ寝台列車!」なのです。

…と思いきや、そこには今までに対戦したことのない強敵が潜んでいました。それは「エアコンなしの灼熱地獄」。

 乗った瞬間から、隣りのコンパートメントのおっさんは上半身裸です。下も、下着なんだか短パンなんだかようわからんやつ。女性陣もみんなノースリ・短パンだし、子どもに至ってはみんなパンツ一丁。

 小さな窓から風はささやかに入ってきますが、駅に列車が停まるたびその風も止まって蒸し風呂状態。

 コンパートメントを貸し切ってはいたものの、ドアを閉めてはとてもじゃないけれど寝られないので、結局一晩中ドアを開けたままとなりました。

 涼しいと見せかけて、南部の暑さ、おそロシア…!

家族たち

ロシア大会は治安の良さと近さからか、ブラジル大会に比べて子連れ参戦のご家族を多く見かけました。こちらは第2戦のエカテリンブルクにて

息子2人を前後に抱えて灼熱の2kmウォーク


 スタジアムまでの道のりも灼熱地獄でした。

 W杯の試合開催日にはスタジアム周辺は車両立ち入り禁止となるので、タクシーで行けるギリギリのところまで連れていってもらい、残りは歩くという作戦。

 運転手のお兄ちゃんも「任せとけ!」なんていうから安心していたのに、降ろされた地点はスタジアムから遥か遠く、Google mapで見るとその距離2km。

「この子たち2人を連れて、この暑さの中2km歩くのはムリです! ココよココ、ココへ行ってほしいの!」と地図上のある地点を差しながら(Google翻訳で)まくしたてると、お兄ちゃんはため息混じりにスマホの翻訳画面を見せてくれました。

「そこは橋の上です」

 オー、アイガットイット…! そういうことですか!

 橋から飛び降りる訳にもいかないので2km徒歩です。
 次男はぐずって歩かないので強制抱っこ紐。眠かったようでソッコー落ちました。

 蒸し風呂と日差しにやられていた長男は歩きたがらず、つい2日前に6歳になったというのに「ママ、おんぶー!」といいます。

 自分の荷物もありますから、私のリュックを長男に背負わせた上で長男をおんぶ。前には抱っこ紐で次男です。総重量35kg超。見た目にはもはや何がなんだかわかりません。なんの修行だコレ。体力自慢の母でよかったぜ…!

観客席は友好ムードが漂よっていた


 しかし暑い。クソ暑い。体感は36度超。体温より暑い。日本代表はこんな中で試合をするのか。もはやサッカーをする気候ではないぞ!

 そんなことを考えながら、やっとのことでスタジアム到着。

 地の利もあって、観客はポーランド人が多めでした。日本人が2割、ポーランド人が4~5割、残りが地元のロシア人といったところ。

ポーランド人サポーター

真後ろに座っていたポーランド人サポーター。「写真撮ってもらえますか?」とスマホを渡したらセルフィーを始めたお茶目なおじさまたちでした

 グループリーグで敗退が決まっているポーランドなのに、それでもこれだけの人が観に来るんだなと感心しました。さすが世界ランク8位の強豪。そして、さすがロシアのご近所(日本も一応ご近所だけど)。

 半分くらいがポーランドのサポーターなので、日本のゴール裏にもチラホラ混ざり込んでいます。私たちの真後ろもポーランド人のおじさまグループでした。

 日本にとっては決勝トーナメント進出がかかっているとはいえ、ポーランドにとっては消化試合。なのでバチバチ感はまったくなく、友好ムードさえ漂う雰囲気です。

ブーイングしたのは誰か


 試合結果はご存じの通り、0-1でポーランドの勝ち。

 1勝1分1敗で勝ち点4のままとなった日本は、3位のセネガルと同ポイントながらフェアプレーポイントで上回り、2位となって決勝トーナメント進出を決めました。

菅谷直弘

セネガル戦で、相手選手の外れたシュートをヘディングして一躍有名になった芸人、「カカロニ」のツッコミ担当である菅谷直弘さん(中央)。次男を見つけて写真を撮りに来てくれました。右端が筆者

 試合の焦点となったのは、ラスト10分の日本のパス回し。スタジアムは「これでもか!」というくらい、ものすっごいブーイングの嵐でした。

 おそらく最初にブーイングをし始めたのは地元のロシア人たち。そして消化試合だとわかっていながらも観戦に来たポーランド人たち。結果を楽しめない上に試合内容もお粗末ときたら、怒るのも当然です。

 日本人でもブーイングをしている人はいました。私も少ししました

 というのも、状況がよく飲み込めていなかったのです。

 試合前にわかっていたのは「ポーランドに勝つか引き分ければ決勝トーナメント進出。負けても場合によっては進出できる」ということ。

 ただポーランドは超格上ですし、W杯のグループリーグで2敗した後の勝率が高い。

 そして日本はがむしゃらに戦っているときはわりといい結果を出すけれど、色気を出して星勘定をしたり、引き分け狙いの戦いをしたりするとあっさり負ける。というのが、30年近く代表戦を見続けている私の肌感覚。

 なので「ええい! 負けたときのことは考えまい!」と、なんにも下調べをしていなかったのです。

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現場では、何が起きているのかわからなかった

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