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W杯、ブーイング現場にいた日本人サポーターの複雑な想い/子連れ観戦記

現地では、フェアプレーポイントのことがわからなかった

 後半の途中で、私のいるゴール裏に「コロンビアが1点取った」という情報が流れてきました。また「このままいけば日本が決勝トーナメント進出だ」とも。  スタジアムの電光掲示版には、詳細なポイントの書かれた順位表が映し出され、観客席がざわめきました。  しかし悲しいかな、ポイントの詳細(勝ち点とか得失点差とか得点とか)はアルファベットの頭文字で記されているだけ。日本が2位であることはわかりましたが、その理由がまったくわかりません。 「日本とセネガルは勝ち点も得失点差も総得点も同じ。そして当該試合は引き分けだから、そこでもポイントは同じ。あとはなんだ? 2位と3位の差を分けるのはなんだ!?」
西野監督

JMPA代表撮影

 フェアプレーポイントの存在はかすかに記憶の片隅にありましたが、その時点ではすっかり忘れていました。だって今まで、当該試合の結果で順位が決まるところまでしか見たことない。それだけ、フェアプレーポイントの出番ってレアなのです。  そしてもうひとつ、私の頭の中をぐるぐる回っていたのは、「セネガルが1点取ったらどうするんだ!?」ということ。  コロンビアがその後もう1点取って1-2でセネガルが負けたとしても、1点取った時点で日本の総得点を上回るので、同じ勝ち点4でもセネガルが2位になってしまうのです。  もちろん同じように、日本が1点取られてしまったらまずいというのもよくわかる。  でもコロンビアが点差をつけて勝っている状況ならまだしも、1点差という危うい状況で時間稼ぎに出る意味が正直よくわかりませんでした。

長谷部が入ったことで、やっと監督の意図がわかる

 けれど、FW武藤を下げて長谷部の投入。  これは明らかに「点を取りに行くのではなく、このまま試合を終わらせろ」のメッセージです。
長谷部

JMPA代表撮影

 確かに、数分前のポーランドの攻撃。サイドを突破されて中央のエース・レバンドフスキへのクロスは、目の前で観ていて肝が冷えるほどの迫力と恐ろしさでした。そしてこのままいけば1点取られるのも時間の問題、という雰囲気にもなっていました。  とはいえ、そのリスキーで他力本願すぎる選択に、ドキドキというよりハラハラしながら視線を送った10分間。  スタジアムではアディショナルタイムの時計表示がないため、90分を過ぎてからは「あと何分!? このまま何もなく時間よ過ぎてくれ!」と祈ることしかできませんでした。

喜びと後ろ髪引かれる思いと…

 そしてつかんだ決勝トーナメント進出。 「やってくれた!」といううれしい気持ちとともに「この試合を最後に、私はW杯を去るのか…」と後ろ髪引かれる思いがむくむくと顔をもたげます。  2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会と、日本代表の試合はすべて現地観戦してきました。だからなのか「次も観る予定だったら、もっと手放しでこの結果を喜べたのに…」という、代表サポとしてはあるまじき感情も湧き起こります。  初戦の戦いっぷりに感銘を受け、急遽この3戦目を目当てに在住地のタイからヴォルゴグラードまではるばるやってきた友人は、「こんな試合を観るために来た訳じゃない!」とご立腹でした。  いろんな立場があり、いろんな意見や感情があるとは思います。  でもW杯は「結果がすべて」。  とくに、サッカー後進国であり歴史も浅い日本は、とにかく結果を出していくしかない。  ドーハの悲劇を体験している世代としては、無駄に攻めて、逆にカウンターを喰らって撃沈、というのだけはもう二度と観たくないのです。

周りの誰からも賞賛されなかったけれど…よくぞベスト16に残った!

 なので、私はあの逃げのパス回しを支持する派です。よくぞベスト16に残った!と今の日本代表を心から賞賛しています。  ただ、試合後に立ち寄ったファンフェス(パブリックビューイングのある、W杯特設のお祭り会場)で、周りの誰からも「いい試合だった!」「おめでとう!」と言われなかったことが悲しかったのも事実。  コロンビア戦やセネガル戦の後だったらきっと賞賛の嵐だった。  めちゃくちゃドヤ顔で、代表ユニや衣装を着て歩いてただろう。  ベスト16に残れたことは素晴らしいことなのだけど、周りから「日本すごいね!」と認められるには、やはり内容も大事。  他国のサポーターや地元の人たちが思わず声をかけてくるような痺れる試合は、次のベルギー戦で観られると期待して、私はひと足ふた足お先に日本へ帰国します。
ロシア

ロシア。行く前のイメージとはまったく違い、人は真面目で勤勉、そしてとっても親切。建物は美しく、気候もよく、食べ物は美味しい。素晴らしい国で大好きになりました

 スパシーバ、ロシア! そして日本代表!  最高の旅でした。 ―子連れサポーターのW杯観戦記 vol.5― <文/おざきゆか> 【おざきゆか】 女性誌を中心に活躍する編集・ライター。家族はラテン系の夫と2歳・5歳男児。今回のロシアW杯で、4大会めの現地観戦(ブラジル大会は1歳の子連れで)。大学時代にサッカー経験あり twitter ID @yukamorocha
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