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『まんぷく』で桐谷健太演じる「世良さん」の名言が胸に響く

 NHK連続ドラマ小説『まんぷく』は第5週(10月29日~11月3日)に入って視聴率もますます好調。戦争が終わり、焼け跡と化した大阪で福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)夫婦の奮闘が始まります。

桐谷健太演じる「世良さん」が大人気なワケ

 朝ドラは、数十年前を舞台にした物語であっても、現代を生きる人の感覚や時代の空気にフィットしないと共感は得られにくいものです。 『まんぷく』の中では、現代の空気を象徴しているような存在が、実は桐谷健太演じる商売人・世良勝夫だと思います。うさん臭くて、ちゃっかりしていて、でも頼もしい「世良さん」。戦前・戦中の回に登場し、その後、戦地に行ってしまい消息不明でした。
 第5週に入り、福子&萬平の貧乏暮らしの描写がしばらく続くのかな…と、ちょっと不安になった視聴者もいるでしょう。 「ああ、こんなとき、うさん臭くてちゃっかり者でたくましい世良さんがいてくれたら」という思いがよぎる、まさにちょうどのタイミングで、世良さんが闇市に登場するのです(10月30日放送)。  視聴者のかゆいところに手が届く、ベストタイミングの脚本・演出です。

「不公平」なんて当たり前。たくましく生き抜く世良さん

 食べる物にも困っている福子たちは、闇市で着物を売ろうとしますが、安く買い叩かれてしまいます。  そこで偶然会った世良さんが着物をいい値段で買ってくれ、救ってくれたのかと思いきや、「貧乏人から安く買って、金持ちに高く売りつける」商売をしていると説明するのです。  そのやり口を批判されると、世良さんはこう言ってのけます。 「あんなあ、今は不公平な時代ですわ。ええも悪いもない。不公平があるだけや」  さらに、「戦死した人間と無事で帰ってきた人間、戦犯にされた人間と免れた人間、闇で儲けた人間と儲けられなかった人間……」と現実にある不公平を挙げ、福子&萬平が不公平の「良いほう」にいることに気づかせます。  そして「不公平が当たり前やのに、それに文句言うてる時点でもうあかんのです」「いつまで負け組でくすぶっているんだ」と萬平らにハッパをかけて、発奮させるきっかけを与えるのです。  この回が放送された30日、「世良さん」がツイッタートレンドワードで上位になるほど、ネット上に喝采の声があふれました。

今の時代にも通じる名言だった

 こういった発言が出るのは、おそらく世良さん自身が「不公平の下のほう」を知っているからこそでしょう。  世良さんがたくましく“清濁併せ呑む”感じは、キレイゴトやわかりきった正論を並べる善人よりも、むしろ清々しいし、よほど好感が持てます。  そして、この「不公平な時代」は、現代にも通じます。  職場や家庭、様々なところで「不公平」を感じている人はたくさんいるでしょう。  そんな不公平に嫌気がさしている現代人にも、世良さんの言葉は強く響いてきます。だから私たちは、気づけば、世良さんの登場を心待ちにしてしまうのです。 ―NHK朝ドラ『まんぷく』レビュー― <文/田幸和歌子> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
田幸和歌子
ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など
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