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吉田羊、息子を虐待する母親を熱演。「役を受けることに一切ためらいはなかった」

 母の愛を求め続けた主人公と、周囲の人々の姿を見つめた『母さんがどんなに僕を嫌いでも』。同名のコミックエッセイを映画化した本作で、太賀さん演じる息子タイジを幼少期から傷つけてきた母親役に吉田羊さんが挑んでいます。
吉田羊さん

吉田羊さん

 原作者・歌川たいじさんの「お母さんへの愛情が、一番の参考になりました」と語る吉田さんに、作品について、またハードな役を演じることも多い日々のリラックス法などを伺いました。

パブリックイメージを壊したかった

――観客に嫌われかねない難しい役柄です。引き受けることにためらいはなかったのでしょうか。 吉田:一切なかったです。私のパブリックイメージがいいものであるとするなら、むしろそこに挑戦して壊していきたいと思いました。何より、太賀くんとお芝居をしたかった。「主演は太賀くんです」と聞いた瞬間、脚本を読む前に「やります!」と言っていました
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 より

『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 より

――本作は実話を描いたコミックエッセイが基です。原作者の歌川たいじさんは、とてもパワフルな方ですね。お会いして、吉田さん個人として感じ取ったものはありますか? 吉田:原作を読んだときに、歌川さんの綴る言葉がすごくステキだと思ったんです。親友のキミツの言葉もそうですし、支え続けてくれた婆ちゃんの言葉もそうです。それをたいじさんの体を通して抽出したときに生まれる、彼の紡ぐ言葉たちはすごく優しくてパワーがあって、説得力がある。歌川さんの言葉の世界観を、ぜひみなさんに知ってほしいと感じました。 実際にお会いしてみると、平和の塊のような人で、彼が来るだけで現場がパッと明るくなるし、みんなが笑顔になるし、優しい気持ちになりました。人一倍悲しい思い、辛い思いをしたからこそ、人の悲しみを察知するアンテナが人一倍強いのだと思います。そこが歌川さんの魅力だと思いますし、だからたくさんの人が彼の描く絵や世界に引き付けられていくのだろうとつくづく思いました。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 より

『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 より

生花を買うことが心のバロメーター

――母親・光子さんを演じるうえで、歌川さんの存在は参考になりましたか? 吉田:いろいろとお話を伺いましたが、御法川(修)監督から、「親子のどこかラブストーリーというか、ファンタジーでありたい。だから忠実でなくていい」と言われていたので、歌川さんから伺ったお話はあくまで参考程度にしました。 ただ、お話を聞くなかで、周囲は本当にひどいお母さんだったと思うのに、彼は「でも一生懸命に生きたお母さんだったんですよ」と笑顔で言うんです。このたいじさんの母への愛を、映画で伝えたいと思いました。だから、彼のお母さんへの愛情が、一番の参考になりました
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 より

『母さんがどんなに僕を嫌いでも』 より

――肉体的にも精神的にもかなり大変な役柄だったと思います。気分転換したいときは、何をされていますか? 吉田:その日の気分で生花を買います。お花屋さんの前を通りかかって、そのときに心が動いた花を。家に帰ってから、“潔い愛”ね、ふんふんとか、花ことばを調べたりして(笑)。お花を買うというのは、言ってしまえば生活になくてもいいものですよね。でもあったほうが豊かになる。そういう豊かなものに心を動かされるということは、まだ自分には余裕があるんだなというバロメーターになりますし、簡単に手に入るリラックス法だと思います。

憧れの女性は樹木希林さん

――吉田さんのお部屋はどんな感じなんですか? 吉田:今は白木のヨーロピアンアンティークの家具が多いです。少しずつ揃えています。最近のお気に入りは、福岡に帰省したときに立ち寄ったアンティークの家具屋さんで見つけたランプシェードです。 お店の方がヨーロッパへの買い付けで見つけてきた、木で作った動物のミニチュアをあしらったオリジナル。象や鹿、鳥などが付けられています。羊はいませんけど(笑)。これは当たりでしたね。暗めの温かな光で、読書には向きませんが、リラックスしてぐっすり寝られます。 ――吉田さんが憧れている大人の女性像はありますか? 吉田:樹木希林さんです。若い時からのVTRを拝見しても、自分の思いをきちんと言葉にできて、なおかつブレない哲学があって、自分の人生に必要なもの、いらないものが取捨選択できていて、いらないものに対して気兼ねなくいらないと言える強さを持っている。希林さんの生き方が憧れです。 ==  強くてかっこいい女性のイメージが強い吉田さん。ご本人もとてもステキな方ですが、作品では気持ちの不安定な光子さんを見事に演じきっています。現場にいらしていた原作者の歌川さんは、ラスト近くでの主人公タイジと光子の道端でのシーンに、号泣されていたそうです。 <文・写真/望月ふみ> ヘアメイク:paku☆chan(ThreePEACE) スタイリスト:梅山弘子(KiKi inc.) (C) 2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は11月16日より全国公開中 配給:REGENTS
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