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新垣結衣主演「けもなれ」が不人気で終わった根本理由

 12月12日に最終回が放送された『獣になれない私たち』(日本テレビ、水曜22時~)。新垣結衣主演×野木亜紀子脚本という『逃げ恥』タッグであることから、大きく期待されたものの、全話平均視聴率は8.7%と低迷しました。
獣になれない私たち

『獣になれない私たち』番組公式サイトより https://www.ntv.co.jp/kemonare/

 主人公はブラック企業に勤める晶(新垣結衣)と、晶の行きつけのクラフトビールバーの常連客で会計士の恒星(松田龍平)。  晶は全方位に気を遣う“すり減らし女”、恒星は世渡り上手で毒舌なお調子者、そんな現代社会に生きづらさを感じるアラサーの男女の2人が本音をぶつけ合い、傷つき合いながらも歩み出していくというラブ(かもしれない)ストーリーです。

「リアリティ」を大事にしたというけど…

 初期は、晶の彼氏(田中圭)が元カノ(黒木華)を4年も同居させたまま煮え切らないことや、晶が勤める職場のブラックぶりなどを、自分や周りに置き換えて見てしまう視聴者が多く、「辛すぎる」という声も続出していました。  辛さや重さから途中離脱した視聴者も確かに初期はいたでしょう。とはいえ、視聴率と評価は必ずしも一致しない作品は多いもの。同作の場合、視聴率よりもむしろ深刻なのは、評価のほうに思えます。 「Yahoo!テレビガイド」の「みんなの感想」での評価は2.86点(5点満点、12月16日時点で投稿数1145人の平均)。『大恋愛~僕を忘れる君と』(戸田恵梨香×ムロツヨシ)の4.42点や、『中学聖日記』(有村架純)の3.06点と比べても低い評価です。  脚本家など、制作サイドは「現実にはそんなに簡単に恋は始まらない」など、リアリティを重要視しているかのように語っていました。  確かに、他の連ドラに比べて、恋は簡単には始まりませんでした。  晶と恒星は、ずっと微妙な距離感のまま、第9話でついに一夜を共にしながらも恋は始まらず、最終回(第10話)では手をつないで終わります。  

視聴者の不満は、逆に「リアリティがない」

 ですが、視聴者としては「恋が始まる始まらない」なんてことに関心を抱いている人は少なく、低評価の理由も、制作側が宣言していた「カタルシスがない」といったところにはないようです。  むしろこの作品にイラついていた人たちの言い分を挙げてみると…… ・「登場人物の行動と心が、終始支離滅裂でしたね」 ・「いつも晶みたいな人って本当にリアルにいる? って思ってた、たとえそれで苦労したとしても自業自得としか思えない晶の行動」 ・「リアルリアルというが…ゆきずりで関係を持った人と『この前の夜ことなんだけど…』って関係を白黒つけるための会話をしたことってあります?」 ・「このドラマは基本的に感情が変だ」  残念ながら、リアリティが感じられないという声が多いのです。  たとえば、上記の「この前の夜ことなんだけど…」について。晶と恒星は第9話で一夜を共にしたのですが、最終回では、なじみのクラフトビールバーで「この前の夜のことなんだけど、事故っていうか…」(恒星)「そんな簡単な話?」(晶)などと、グダグダと話し合いをするのです。  確かに、晶がいたような職場やこんな人はいるかもしれませんし、設定・シチュエーションのリアリティはあるかもしれません。でも、肝心の「思考や行動、感情のリアリティ」が感じられないという指摘です。  ドラマや映画では、設定や展開がぶっ飛んでいて、ありえないことばかりでも、登場人物の感情や行動の描写にリアリティがあれば、魅力的に感じられることが多いもの。 「獣になれない=言いたいことが言えない、本音で生きられない」人たちは、実は本当に言うべき相手には言えないわりに、ビアバーでクダを巻いて陰口を言ったり、関係のない人相手に「まったく、どいつもこいつも!」と八つ当たりしたりします。確かに、こういう人はいそうな気もします。でも、あまり近づきたくないと思う人は多いでしょう。これがリアリティだとしたら、ちょっと悲しい気持ちになります。
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ビール好きからは賛否両論
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