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結婚後、メンヘラに豹変した妻。夫が精神的DVに耐えつづけた理由

僕が頑張れば、妻は“治る”


 もともと痩せ型の田崎さんだったが、結婚後はみるみる痩せていき、仕事仲間からも心配されるようになった。心身ともに余裕がなくなったため、以前ならこなせた仕事量がこなせなくなり、依頼も断りがちに。しかし、そのことを皆子さんに言えば不機嫌になるのは目に見えていたので、黙っていた。

皆子は、僕が体調が悪いとか調子が悪いとか口走ると、私のせいなの!? って逆ギレするんです

 なんという窮屈な生活だろう。しかし田崎さんは別れを切り出さなかった。

「僕の出身は新潟で、両親も兄家族も新潟に住んでるんですが、他の親族も含めて離婚経験者がいなかったんです。だから、そもそも“離婚”という選択肢があることを想像すらしませんでした。結婚生活にはみんな苦労していて、自分のケースもよくある夫婦の問題に違いない、と思いたかったんです」

よくある夫婦の問題に違いない、と思いたかった それにしても皆子さんのふるまいは異常だ。

「薄々おかしいとは感じていましたが、違う人間がふたりで突然共同生活をはじめれば、習慣の違いでこれくらいの衝突はあるものだと思って……いえ、そう自分に言い聞かせていたんです」

 生真面目で頑張り屋の田崎さんは、絶対に諦めないと歯を食いしばった。

「当時の僕は、僕がうまくやれないせいで皆子が不機嫌になっている、僕が不甲斐ないせいで皆子の心が不安定になっている、だから僕がもっと頑張れば皆子は“治る”と信じていました。今まで磨きあげてきた言葉を尽くし、僕のすべての能力を出し切って、彼女が不快に思う行動をひとつずつ潰していけば、達成できるはずだと」

 聞けば聞くほど涙ぐましい。

「僕には学習能力がある。できる男だ。自分を信じろ、と自分に言い聞かせていました。だから皆子から手ひどいダメ出しを受け、うんざりした顔で『私たち、離婚しかないかもね』と何度言われても、食い下がっていました。ごめんよ、今回はうまくできなかったけど、次からはちゃんとやる。だから大丈夫。大丈夫だよと……」

 しかし、どれだけ努力しても衝突はいっこうに減らなかった。田崎さんは、この頃から過呼吸に悩まされるようになる。

※続く#2は、2月13日配信予定。

<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
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稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。 【WEB】http://inadatoyoshi.com
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