Lifestyle

「妻がDVの怪物になった」うつ状態の夫に浴びせた罵倒と、お金の要求とは…

家を飛び出した後も、妻の生活費を払い続ける

 先に帰宅した田崎さんは、大急ぎで当座の着替えと最小限の仕事道具をまとめ、行くあても考えずに家を出た。ビジネスホテルがどこも満室だったので、その日は漫画喫茶に宿泊。その後、家具付きのウィークリーマンションを経て、都内のワンルームマンションに引っ越した。無論、皆子さんに住所は教えず、メールやLINEはすべてブロック。2019年2月現在、離婚を希望する田崎さんと希望しない皆子さんは平行線のまま。双方弁護士を立てて係争中だ。 「皆子は今でも、僕と住んでいた3LDKのマンションに住み続けているんですが、家賃は僕が全額払い続けています。皆子のほうが圧倒的に収入が少ないので、婚姻費用として家賃分くらいは支払う必要があると弁護士に言われて。 にもかかわらず、それでも生活できないから月々10万円ずつ振り込めと言われたので、追加で100万円を振り込みました。払う義理はまったくないんですが、訴訟になった時、僕が“生活費を入れなかったこと”が『経済的なDV』とみなされる可能性を潰したかったのです。皆子には弁護士を通じて、もっと安い単身者向けのマンションに引っ越してくれと伝えてるんですが、なかなか引っ越してくれません」 ※写真はイメージです しかも、皆子さんは田崎さんに対する精神的DVを一切認めていない。 「皆子は『夫が家のお金を持って逃げてしまった』『夫がパニック障害でなにもやらず、私が大変だった。夫としての役目をまったく果たさなかった』と主張しているようです。皆子が自分の母親にそう説明し、皆子の母親がうちの母親に連絡したことで判明しました。もちろん、うちの母はそんなこと信じていませんが」

「ヒント」に気づけなかった

 田崎さんは交際前や結婚前に、なぜ“怪物”の正体に気づけなかったのだろう。 「それは、いろんな人から言われましたよ。もっと長く交際して見極めるべきだったのでは? とか、女性の友人に会わせて印象を聞いたほうが良かったのでは? とか。でも……あれは絶対わかんないですよ! 交際中に怒ったりイライラしたりというのを、ほとんど見かけませんでしたから」  皆子さんは、同居後に文字通り豹変したのだ。 「意図的に自分の本性を隠していたとしか思えません。結婚前に同居期間を設ければなにか発見できたのでは? と言われたこともありますが、僕と皆子の両方を知っている女性の友人からは、『結婚前に同居したとしても、彼女ならずっと隠し続けたと思う』と言われました」  ただ、ヒントはあったはずだ。プロポーズから結婚までの間に、皆子さんは二度『結婚をやめたい』と田崎さんに申し出ている。 「そうですね……。おそらく彼女は、過去に誰かと深い関係になったのち、壮絶な破綻を経験していたんじゃないでしょうか。それを繰り返すんじゃないかと不安になった。その意味で二度の『結婚をやめたい』は、“怪物”の中にわずかだけ残っていた“良心”が僕に発した警告だったのかもしれません。ここから先は引き返せないけど、あなた本当に大丈夫? という。でも、僕はそのヒントに気づけませんでした。……バカでした」

“普通の家庭”が欲しかった

 田崎さんは昔を振り返るような目をしながら、しみじみこう語った。 「僕は20代の頃に食えない時期が続いたんですが、30歳をすぎたくらいから、ようやく仕事が軌道に乗ってきて、生活に苦労しなくなりました。欲しいものは、だいたい買えるようになったんです。 でも、その頃から“自分のためだけに稼ぐ”のが虚しくなってきちゃったんですよ。自分ではない誰か大切な人、家族のために稼ぎたい。贅沢なんてできなくていい。子供はいてもいなくても構わない。僕が育った実家や兄の家族のような、普通の、おだやかな、あたたかい家庭。それが欲しかっただけです※写真はイメージです 成熟した大人の人間が抱く、ごくあたりまえの感情。誰もが求める権利のある、すこやかで、ささやかな人生設計。それは叶わなかった。 「皆子と同居中、何十回も“あなたのせいで、わたしは不幸”となじられました。でも僕は、誰かを不幸にするつもりなんて、これっぽっちもありませんでしたよ」 <文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。 【WEB】inadatoyoshi.com
1
2
3
4




あなたにおすすめ