「あと一歩で不倫してた」妻を思いとどまらせた、不器用な夫のひと言とは
「夫婦は長年一緒にいると、『いて当たり前の存在』になる。日常生活の中で、改めて相手のいいところを探そうという気にはならないだろう。それは馴れ合いのよさでもあるのだが、人間というのは慣れると相手のあら探しをしたくなるものらしい」と語るのは、男女関係や不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さん。
「うちは高校時代の同級生なんですよ。くっついたり離れたりしながら28歳のときに、周りから『もういいかげんにしろ』と言われて結婚したんです。子どもがふたり生まれて、私は正社員の仕事をやめて、そのまま同じ職場でパートに。夫はろくに家事もしない、私たちの親世代を受け継いだ典型的な“日本の夫婦”ですね」
メグミさん(42歳)はそう語る。そんな彼女が、ふとときめいたのは1年ほど前。パート先に赴任してきた7歳年上の上司だった。
「私はもともと社員だったし職歴も長いので、その上司に仕事のことなどをよく聞かれたんですよ。話をしながら一緒に仕事をしていく中で、だんだん親しくなっていって。一度、飲みに行こうという話はしていましたが、子どもがいるから夜はむずかしくて」
そんなとき、夫の飲み会が続いて、思わず「いいなあ、飲み会。私はいつだって断っているのに」と言ったら、夫は罪悪感を覚えたのか「今度、行っておいでよ。あらかじめわかったらオレが早く帰ってくるから」と言い出した。
「それなら、と上司に話して飲みにいく計画をたてました。夫はおそらく部署の飲み会だと思ったでしょうけど、本当はふたりきり。まあ、そのくらいの嘘はいいよねと思って」
急に実現した、上司とのデート。落ち着いた小料理屋でおいしいものを食べ、仕事の話から昔好きだった映画の話などで盛り上がった。店を出て近くのバーでもう1杯。
「すっかり酔って店を出たところで足をとられて。彼がすっと抱きとめてくれました。本当にこの人が好きだと思った瞬間、彼の温かい唇が近づいてきて。足が震えましたね。夢のような時間だった」
それ以降、彼女は彼に心を奪われた。もちろん、それ以上の関係には進んでいない。だが、彼からは「僕はあなたのことが本当に好きです」というメッセージも届き、彼の気持ちも確認できたことで、彼女は舞い上がってしまった。
毎日、彼の顔を見るだけで幸せだった。いつか機会があったら、またふたりきりの時間を過ごそうと彼とも話した。
夫への不満から他の男性に目が向いてしまったある女性の話を、亀山さんがレポートします。(以下、亀山さんの寄稿)