実直で真面目な性格の女性ほど、恋愛した時の変貌ぶりが凄まじいというのはよくある話。 　会社員・A子さん（30歳）の直属の上司だったというT田さんも、まさにそういったタイプだったといいます。 「T田さんは40代半ばで、私と同じ部署の課長でした。いかにもバリキャリといった雰囲気のキリッとした女性で、芸能人でいうと元タカラジェンヌの遼河はるひさんみたいな感じ。仕事はできるし、頼り甲斐もあるし、素敵な女性だと誰もが思っていました」 　上層部からの信頼も厚く、部下たちからも慕われる理想的な女性上司。A子さんもよく仕事の相談に乗ってもらっていたそうですが、ほんの少し抱いていた違和感がひとつだけ。彼女には全くもって男性の影が見えなかったのだそうです。 「そりゃ、会社ですからあまり大っぴらに恋愛トークなんかする人はいないですけど、飲み会の席とかでもその手の話になるとT田さんはフッと席を立ったり、話題を反らしたりすることがけっこうあったんです。苦手なのかな？ とも思ったのですが、そういうわけでは無かったことは後日わかりました」 　それは、同じ部署に新しく若手の男性社員が異動になってきた時のこと。彼の名前はNくんで、年齢は26歳。福士蒼汰バリの爽やかなルックスの持ち主で、入社当時から女性社員の間ではイケメンと噂されていた青年でした。 「元野球部のスポーツマンらしく、上下関係を大事にする子で礼儀もすごく正しかったんですよ。T田さんも彼のことはお気に入りだったみたいで、大きな仕事も積極的に任せてました。でも、それは彼のキャリアや実力には見合わないものも多くて……プレッシャーに押しつぶされそうになってる姿をよく見るようになりました」 　しかし、Nくんが仕事で失敗しそうになるたびにT田さんがこう言ってトラブルを瞬時に解決してしまったそうです。「私に任せておけば大丈夫よ」。そして手柄はまるっとNくんのものに。 　上層部からのNくんの評価は上がる一方でしたが、実直な性格の彼はどこか後ろめたい気持ちを抱いていたようです。そして、そのうちにT田さんの行動はエスカレートしていきました。 「ミーティングだって言ってはNくんを連れ出して2人で食事。時には手作り弁当持参で、会議室で一緒に食べてる姿を見ることも。何でもない日に『頑張ってるご褒美だから』ってネクタイやシャツをプレゼントしたり……その関係は上司と部下というよりは、若いツバメに貢いでいるマダムそのものでした」 　休日すら勉強会と称してNくんを呼び出し、実質デートをしていたというT田さん。Nくんが断りづらい立場であることを考えると、上司の立場を乱用したセクハラであるといえるでしょう。そんな状態が一年近くも続くと、徐々にその行動は会社でも問題になっていきました。 　そしてNくんは同僚たちから「枕営業」などとやっかまれ、軽くノイローゼ状態に。T田さんはそんなNくんをさらにかばうため、まさに悪循環でした。