――日本社会も変わって来ていて、離婚率も欧米と較べても決して低いほうではないと思います。ただ、日本の男性は一般的に、妻には“女性性”というよりも“母性”を期待しているような気がします。例えば、日本は欧米のように子供をベビーシッターに預けて夫婦で出かけるという習慣はまだ定着していませんし……。
『メモリーズ・オブ・サマー』より
グジンスキ監督「ポーランドでは、夫婦生活をまず大事にするという文化が昔からあり、1970年代から子供を誰かに預けて夫婦で出かけるという習慣は定着していましたね。その時代でも、夫婦で家事や育児を分担するのも一般的でした。
現在においては、育児休暇をとる男性も多いんですよ。
そうは言っても、夫婦が別れたときには、女性のほうが子供を引き取るのが大多数。離婚して子供を引き取らない母親は、“
子供を捨てる”というふうに見られている……。
母性はセクシュアリティよりも優先されるべき、というのがいまだに常識です。つまり、セクシュアリティにおいては、男性のほうが女性より優先されているということですよね」
――そういった意味では、世界はまだまだ男性優位社会ですね。最後に監督にお聞きしたいのは、夫婦の愛について。運命の人と結婚すれば、愛は永遠なのでしょうか? それとも、努力や妥協によって保たれるものだと思いますか?
アダム・グジンスキ監督
グジンスキ監督「運命の赤い糸というのは私は信じていません(笑)。どんな夫婦にも努力と妥協が必要ですが、夫婦には2つの試練があると思うんです。
ひとつは、どこまでお互いに正直になれるか。もうひとつは、子供ができたときに状況が一変すること。
2人の人間がこれらの試練に打ち勝ち、お互いを補いあいながら人生を全うする……というのは理想だけれども、人間は変わります。20才で出会った相手が20年後に同じ人間かどうか――。人間は年を重ねるにつれ、優先課題が変わりますよね。だから、結婚というのは本当に複雑で難しいものだと思います」
(C) 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódź-Miasto Kultury w Łodzi
<文/此花さくや>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】此花わか
映画ジャーナリスト、セクシュアリティ・ジャーナリスト、米ACS認定セックス・エデュケーター。手がけた取材にライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、エディ・レッドメイン、ギレルモ・デル・トロ監督、アン・リー監督など多数。セックス・ポジティブな社会を目指してニュースレター「
此花わかのセックスと映画の話」を発信中。墨描きとしても活動中。twitter:
@sakuya_kono
6月1日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、UPLINK吉祥寺ほか全国順次公開! 監督・脚本:アダム・グジンスキ 撮影:アダム・シコラ 音楽:ミハウ・ヤツァシェク 録音:ミハウ・コステルキェビッチ 出演:マックス・ヤスチシェンプスキ、ウルシュラ・グラボフスカ、ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ 原題:Wspomnienie lata /2016年/ポーランド/83分/カラー/DCP 配給:マグネタイズ 配給協力:コピアポア・フィルム