Lifestyle

もしストーカーに狙われたら…その恐怖と対処法を聞く/『ストーカーとの七〇〇日戦争』

 別れ話のもつれからストーカー化した元恋人との戦いの様子を描いた、ストーカー体験リアルドキュメント『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)。
内澤旬子『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)

内澤旬子『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)

 作者の内澤旬子さんは、小豆島へ移住した2年目に交際をはじめたAという男性から、別れ話を機に、メッセージでの罵倒や脅迫、インターネット掲示板への中傷書き込みなどのストーカー被害を受けるようになったそうです。警察の介入もあって、Aには執行猶予なしの懲役10カ月の刑が下りますが、被害の最中はもちろん、ストーカー行為の治まった現在でさえも、計り知れない恐怖と戦い続けていると言います。  前回、内澤さんは、自分でも気づかぬうちに精神が蝕まれていく恐ろしさ、そして、被害者であるにもかかわらず、一生不自由な生活を強いられる理不尽さなど、ストーカー被害の実情を話してくれました。今回は、経験から得たストーカー対策についてお聞きしたいと思います。
内澤旬子さん

内澤旬子さん

ストーカー被害に遭ったら、すぐ警察に相談を

――前回、ストーカー被害の恐怖についてお話くださいましたが、その中で「Aは治療を受けていない」と言われていました。そもそもストーカーは治療できるものなのでしょうか? 内澤旬子さん(以下、内澤)「ストーカーは、ある一定のレベル以上は行動を自分で制御できない精神障害なので、治療で無害化できる可能性があるんです。実際に、治療に結び付ける取り組みも始まっています。ただ、被害者がストーカー本人に『病院で治療できるから行ってくれ』なんて言えませんし、言ったところで相手は聞かないですよね。なので、まずは警察に相談に行って、警告の際などに治療やカウンセリングを勧めてもらうのがいいと思います」 ――警察に相談したことが相手に知れると、余計に激高させてしまわないですか? 内澤「その可能性があるから怖いですよね。私の場合も、『警察に相談する』という一言から相手が豹変しましたし。あとから聞いた話ですが、嘘でもいいので、『あなたにこういうことをされて苦しいから、心療内科や相談機関に行きます』と伝え、『そこで警察に行くように勧められた』という体をとると、相手への刺激を和らげられるそうです」 ――自発的ではないというのがポイントなんですね。とはいえ、警察に相談するタイミングが難しそうです。 内澤「『この程度では相談を受けてくれないかも』などとは思わず、少しでも『いやだな』『苦しいな』と感じたら、警察へ相談したほうがいいです。いきなり警察に行くのに抵抗があるなら、相手にあきらかな違法行為がないのであれば、自治体に設置されている男女共同参画センター(※地方公共団体によって名称がちがいます)など、話しやすいところでもいいと思います。  いずれにしても、自分が思っている以上に判断力が鈍っていることが多いので、ひとりで抱え込まず、はやめにしかるべきところへ相談したほうが後々のためだと思います。なお、男友達や今の彼氏に相談して助けてもらうとか、復讐屋に依頼するとかは、こじれるだけなのでやめたほうがいいですね。警察や男女共同参画センターの相談員など、必ずプロに頼るようにしてほしいと思います」 内澤旬子さん

書くことで自分を守った

――内澤さんも割と早い段階で警察に相談されていますね。 内澤「Aとのメッセージのやり取りに恐怖が募り、なす術もなくなり、さらに島の人や友人などにも迷惑がかかりそうな気配があったので、生活安全課に相談しました。  ただそのときは、警察に言ったらどうなるのかが、まったくわかっていなかったんですよね。警察や検察とのやり取りのなかで尊厳を削られることもあるとか、自分の言動や態度がストーカー規制法の適用や警察の士気や裁判に影響するとか、事前に知っていたらよかったなと思うことが多々あったので、本にするときは、読者がもしストーカー被害に遭ったときに心の準備ができるようにと、詳細に書き連ねました」 ――『ストーカーとの七〇〇日戦争』は、ストーカー被害に遭った際の参考書ともいえるほど、手続きや一連の流れが細かく書かれています。ただ、いまだ恐怖が癒えない中で振り返るのは大変な作業ではなかったでしょうか? 内澤「本のためとはいえ、Aとのメッセージのやり取りや、インターネット掲示板への書き込みのスクリーンショットなどを見返す作業はツラかったです。でも、できるだけ正確に書き出さないと忘れることもできないと思い、公的記録とも向き合いました。あと、作家・桐野夏生さんから、『書くことが自分を守ることになる』と言われたのも大きかったと思います」 ――「書くことが自分を守る」とは、どういうことですか? 内澤「もし事件のことを一切書かず、島での楽しい出来事だけを綴っていたら、『楽しそうにしてやがる』とAを刺激する可能性があるので、それを防ぐというのがひとつ。  あとAが書き込んだインターネット掲示板を見ると、私が隠しておきたいだろうと思うことを、自分に都合のいいように書いていたので、『バラしてやる』という気持ちがあったと思うんです。だから、自分の悪いところも恥も何もかもを含め、自らすべてを正確に書いてしまえば、相手はバラせることがなくなって、攻撃しづらくさせられるのではないかと」 内澤旬子さん
次のページ 
ストーカー化させないことがいちばんの防御策
1
2
Cxense Recommend widget


あなたにおすすめ