ガンの愛犬に新たな腫瘍が。つらい治療か、もうやめるのか…|ペットロス Vol.26
<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.26>
心理カウンセラーの木附千晶さんは、16年一緒に暮らしたゴールデン・レトリーバー「ケフィ」を2017年1月に亡くしました。
ケフィはメニエール病などと闘い、最後は肝臓がんのために息を引き取ったのです。前後して3匹の猫も亡くし、木附さんは深刻なペットロスに陥ってしまいます。自分の体験を、心理カウンセラーとして見つめ、ペットロスについて考えます(以下、木附さんの寄稿)。
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1か月前の検査では、以前からあった疾患(リンパ腫、血栓、肝臓内の血ぶくれのようなもの)以外、とくに問題はありませんでした。二次診療病院の主治医からも「高齢なのに、心臓はきちんと動いているし、尿の濃度も基準値以内できわめて健康」とお墨付きをもらいました。
ところがこの日(2016年12月5日)の検査結果はまったく違いました。心臓の動きは弱まり、尿の濃度は薄くなって脱水や循環不全が起きていました。抗ガン剤の副作用による貧血やリンパ腫による胸水による肺の圧迫も重なって、体内の酸素量が減り、呼吸困難や脳貧血のような状態を起こしやすくなっている可能性がありました。
「つまり、今の状態は『老衰』ということですか?」
おそるおそる尋ねると、主治医はこう答えました。
「たとえば今のケフィちゃんは、心臓の動きが悪くて体中にうまく血液を巡らせることができません。でもこれは『心臓病』ではなく『心機能の低下』です。ですからお薬で改善しようとするのは、なかなか難しいかなと思います」
「病気」であれば治療法があるかもしれません。でも、「老衰」には治療法はありません。
事態を受け入れられずにいる私に、さらに重い現実が突きつけられました。肝臓に新たなしこりが見つかったのです。
「表面から触っても分かるくらい肝臓が硬くなって、映像でも大きなしこりが確認できます。1月でこの大きさになったとすると悪性の可能性が高いでしょう」(主治医)
今まで治療してきた悪性度の低いリンパ腫が悪性度の高いものに変化したのか。それともまったく違うガンができたのかは、詳細な細胞検査で特定する必要があります。しかしいずれにせよ悪性度が高い腫瘍なら、今までケフィが飲んできた治療薬では効かないということでした。
「肝臓に針を刺して検査したことで、しこりが破裂したり、はがれて大量出血したりする可能性もゼロではありません。もともとケフィちゃんは、抗ガン剤の副作用で血小板や白血球が減っていますから、やるのであれば輸血や開腹手術の準備が必要です」
2015年末に、ケフィが心膜に水が溜まる心タンポナーデを発症してから、いったいどれだけの「判断」と「選択」そして「決断」を迫られたことでしょう。
一刻を争って病院に連れて行くべきか、自宅で安静にすべきか。麻酔を使ってまで検査をすべきか、止めるべきか。治療を開始するのか、見送るのか。薬を増やすのか、このまま維持するのか……。
それこそ、今ゴハンを食べさせるべきか寝かせておくべきか、無理やり水だけでも飲ませるほうがいいのか否か。トイレに連れ出すか様子を見るべきかなど、ごく日常的なことまで、挙げたらキリがないほど、毎日、何かしらの「判断」や「選択」、「決断」を迫られてきた気がします。
一か月前と今日

肝臓に新たなしこりが
たくさんの「決断」を迫られてきた
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