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米津玄師作の「パプリカ」で子供たちが踊りまくる、大ヒットの理由

 いま、小さな子供たちが夢中になっている曲があるんだそうです。それが、小3から中1の男女5人組ユニット「Foorin(フーリン)」が歌う「パプリカ」。
米津 玄師「パプリカ (NHK出版オリジナル楽譜シリーズ)」NHK出版; 菊倍版

米津 玄師「パプリカ (NHK出版オリジナル楽譜シリーズ)」NHK出版; 菊倍版

 作詞と作曲を米津玄師(28)が手がけ、“2020年とその先の未来に向かって頑張っている全ての人を応援する”という「2020応援ソングプロジェクト」として制作されました。ところが、当初の目的を超えて、いま社会現象になりつつあるというのです。  ネットでも、驚きの目撃証言が続出。この曲が流れると、「10ヵ月の息子が泣き止む」とか、「スーパーで知らないこども同士の合唱になった」とか、「1歳児から4歳児が踊りまくってた」など、「パプリカ」旋風はとどまるところを知りません。  当然、これまでにもみんなが口ずさめる曲や、振付けが大流行する曲はありました。しかし、話を聞いていると、「パプリカ」はその両方を満たしているようなのです。一体、どこが魅力なのでしょうか?

わらべ歌的な歌心がある点が、米津玄師の強味

 まず、歌やサウンドの面から見ていきましょう。この曲が発売された当時、音楽プロデューサーの近田春夫氏(68)は、こう論じていました。 <展開が案外複雑というか、たとえば転調をしてみせたり、旋律もことのほか要素が多く、俗にいう“凝った作り”である。パッと聴いて子供がすぐに口ずさめるような歌では、必ずしもなかったのである。>(週刊文春2018年9月6日号『近田春夫の考えるヒット』 NHK2020応援ソング『パプリカ』は案外凝ってる より)  確かに、メロディの一節ごとに、予想を裏切る収束の仕方をしていくのが特徴的です。たとえば、曲のタイトルでもある「パプリカ」という単語ひとつとっても、素直に言わせない仕掛けがある。“ぱぷりぃぃ~か”と、こぶしをつけなければ歌えないことで、良い意味でヘンな造語のように響くのですね。
Foorin 「パプリカ(初回生産限定盤)(DVD付き)」SMR

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 ここで、皆さんの子供時代を思い出してみてください。ごくつまらない言葉のアクセントを変えたり、文字の順番を入れ替えたりして遊んだことはないでしょうか。米津玄師のいたずら心は、そんな無邪気さをインスパイアしたように思います。  こうした節回しの妙に加えて、転調やカラフルなサウンドが、曲をにぎやかに盛り立てている。多動的な子供たちを飽きさせないアトラクションが満載だといえばよいでしょうか。  しかし、それでも根っこにわらべ歌的な歌心がある点が、米津玄師の強味なのですね。やはり、その歌をうたいたくなるためには、物珍しさだけではダメで、筋の通った情緒が欠かせないからです。  大して好きでもないのに、気づけば鼻歌でうたってしまう曲。理屈を超えた浸透力も、「パプリカ」の魔力なのかもしれませんね。
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子供たちが踊りたくなるワケは?
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