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氷川きよしファンの祖母が「お棺に入れて」と願った等身大パネルは今……

 故人の願いはできるだけ叶えたい……これは、先立たれた愛する家族の本音だと思います。しかしながらそれを全て叶えられないことがあるのも事実。A美さんも10年前に亡くなった同居していたお祖母さんの最期の願いを遂げることが出来なかったと今でも悔やんでいます。
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写真はイメージです

「祖母はもともとおっかけ気質で、若い頃は五木ひろしの大ファン。80歳手前くらいから中居正広に惚れこんでしまって、当時放送してた『うたばん』や彼のラジオを毎週チェックしてました。お陰で私より流行りの曲に詳しかったくらいです」  その手の情報に疎かったA美さんは、宇多田ヒカルを知ったのもお祖母ちゃん経由だったそうです。そんなお祖母ちゃんは、お祖父ちゃんが亡くなった直後から突如として氷川きよしにハマり、CDやDVDなどを買い漁るようになりました。

部屋の壁は一面きよし

「その前が中居くんだったので、ある意味では年相応なものにハマってくれたかなと思ってたんです。でも、ちょうど一人暮らしになったタイミングだったのが良かったのか悪かったのか……お祖父ちゃんが生きていた頃とは比べものにならないくらいの量のグッズを買い漁り始めました」  氷川グッズは増えに増え続け、部屋の壁には一面きよしだらけのポスター群、うちわなどがズラリ。さらにどこから手に入れたのか、恐らく販促用の等身大の氷川きよしパネルがベッド横に鎮座していたそう。 「正直、行くのがちょっと怖くなるレベルでしたね。あの家に氷川きよしはいったい何十体いたのか……。それから暫くして、祖母は体調を崩して入院することになりました。もしかしたらもう自宅には帰れないかもしれない、と医者から私たちは聞かされていました。本人もどこかで悟っていたのかもしれません」

きよし等身大パネルをお棺に入れてあげれば……

 ある日、お見舞いに行ったA美さんにお祖母ちゃんは「死んだらきよしパネルをお棺に入れてくれないか」とお願いをしてきました。しかしA美さんは「そんなこと言うなんて、縁起でもない!」と言って首を縦には振りませんでした。 祖母 氷川きよしパネル 遺言今思えば、あれは最後のお願いだったんです。その翌日から祖母は意識を失くし、そのまま帰らぬ人となりました。通夜や葬式の準備でバタつく中、私が気になったのは祖母の家にある氷川きよしグッズのことでした」  お祖母ちゃんは「きよしパネルをお棺に」と言っていましたが、さすがに等身大パネルの添い寝ははばかられたA美さん。そこでお祖母ちゃんがお気に入りだったらしいポストカードを小さな額縁に入れ、それをお棺の中に忍ばせたそうです。 「でも、祖母の家に帰って遺品を整理していた時に出てきた日記を見てちょっと涙が出ました。氷川きよしがテレビに出たり、ラジオで曲が流れたりする度にどれだけきよしを好きなのかを書き留めていたんですよ。あれだけ好きなまま逝ったのなら、パネルのことをどうにかしてあげれば良かったかなと思います」

実家にたたずみ続けるきよしパネル

 さらに大変なのはその後でした。残った氷川きよしグッズをどうするかで、家族内で大モメしたのです。結局、ほとんどのグッズは処分することになりましたが、等身大パネルだけはそのまま置いておくことになったそうです。 「なんか、想いがこもってる感じがして捨てるに捨てられなかったんですよね。パネル? もう実家を出て長いのでよくわかりませんが、きっと今も家にあると思いますよ。家族も持て余してるでしょうし、あの葬儀の時に祖母の願い通りにしてあげれば良かったと、今は少し後悔しています」  今もA美さんの実家の片隅には、氷川きよしがたたずんでいるのかも……。 ―冠婚葬祭・式典のトンデモエピソード― <文/もちづき千代子・イラスト/ただりえこ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。度を超したぽっちゃり体型がチャームポイント。
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