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独身でも自虐しない。人気エッセイ漫画『つづ井さん』の魅力を担当編集に聞く

 著書累計40万部の大ヒット漫画、「CREA WEB」で連載中の「つづ井さん」シリーズ。  20代後半のオタク気質な独身女性の日常を描いたエッセイ漫画で、完結した『腐女子のつづ井さん』に続いて、2019年9月には新シリーズ『裸一貫! つづ井さん』第1巻が刊行。
つづ井『裸一貫! つづ井さん 1』文藝春秋

つづ井『裸一貫! つづ井さん 1』文藝春秋

「第3回マンガ新聞大賞」大賞や「このマンガがすごい! 2020」オンナ編第8位にランクインしたほか、すでに7刷りの重版がかかっています。 『裸一貫! つづ井さん』は、なんにでもハマりがち(=オタク気質)なつづ井さんと4人の女友達による、多幸感溢れる日常を描いています。  5人は休日になれば部屋に集まってオタク活動をし、夜の公園で本気で遊んだり、お風呂に入ったらほめ合ったりと、マイペースに人生を謳歌。全員が独身ですが、アラサー女性を描く際につきまといがちな恋愛や結婚への焦りや執着、のような話題は全く出てきません。
「夜の公園1」『裸一貫! つづ井さん 1』より

つづ井『裸一貫! つづ井さん 1』文藝春秋より(以下同)

「夜の公園2」『裸一貫! つづ井さん 1』より そんな『裸一貫!つづ井さん』の作者、つづ井さんがコミックス発売のタイミングで、SNSのnoteに2019年9月11日発表した文章が大きな話題になりました。

「自虐をしない」に行き着いた過程に共感の嵐

<私が「裸一貫!つづ井さん」の連載を始めるときに、決めたことがあります。それは「自虐をしない」ということです。>という一文から始まるその記事には、20代の未婚の女性で、現在パートナーはおらず、恋愛経験が極端に少ないことにたいして、「若い女性なのに彼氏もいなくてかわいそう、寂しいはずだ」というような言葉をかけられることが度々あり、その対策として先回りして「自分マジモテなくて笑」などの自虐的発言を頻発していた時期があったと書かれています。  自虐的な振る舞いは、気が付かないうちストレスとなり肉体を蝕んでいき、やがて円形脱毛症になってしまったというのです。そういった経験から、冒頭の「自虐をしない」に行き着くに至った過程が、丁寧な文章で綴られています。  このnoteの記事が公開されるやいなや、SNS上では共感の嵐が巻き起こり、Twitterでは「つづ井さん」がトレンド入りするほど注目を集めました。 「わたしも彼氏なしアラサーです。好きなことをして楽しんでると、なんで彼氏いないの? 結婚願望はあるの? と言われるのが謎でした」「なぜ女性の幸せに男を絡めたがるのかわからない」「ずっと女性としての自分がダメだと思っていましたが、この文章を読んで自分は何もダメじゃないと思いました」など、たくさんのリプライがつづ井さんのnoteに寄せられました。

つづ井さんの担当編集・白川さんに聞いてみた

 多くの女性の心を動かしたつづ井さんの言葉、そして作品。そこで、文藝春秋でつづ井さんの担当編集をしている白川恵吾氏に、どのようにして『裸一貫!つづ井さん』が出来上がったか、つづ井さんはなぜここまで多くの人々の心を動かすのか、お話を伺いました。まず、つづ井さんが自虐的表現を意識的にやめていこうとしていることを、担当編集として感じ取っていたのでしょうか。 「『腐女子のつづ井さん』が完結し、新シリーズ『裸一貫! つづ井さん』が始まるにあたり、あらためてこの作品でつづ井さんが何を語っていくかを明らかにするプロローグを描いていただくことになりました。  そうして完成したプロローグでは、同級生の結婚&出産ラッシュの中、『いつまでそんな感じなの?』『ちゃんと将来のこと考えなよ』と言われるなか、つづ井さんが『私は…私は…特にな~んとも思ってませ~~ん ピッピロピ~~』と返すシーンがハイライトになっています。“アラサー”とか“独身”とか、そういった個人の属性を自虐ネタにするようなエッセイにはしない、というつづ井さんの強い意志を感じました」 「はじめに1」『裸一貫! つづ井さん 1』より「はじめに2」『裸一貫! つづ井さん 1』より そもそも最近の傾向として、アラサーのおひとり様をテーマにした女性エッセイ漫画で、「自虐的笑い」は減ってきているのでしょうか。 「たとえば「CREA WEB」で連載されていたおづまりこさんのコミックエッセイ『ゆるり より道ひとり暮らし』では、お家飲みを楽しむため、月曜日に冷蔵庫に入れた缶チューハイを金曜までがまんしたり、美味しいアップルパイを求めて1万5000歩も散歩したり、ひとり温泉旅行で昼からクラフトビールとコロッケで宴会したり……と、自分なりにシングルライフを満喫する著者さんの姿が描かれています。恋愛や結婚、“独身”という属性をネタにしなくても、身の回りの幸せな瞬間をつづって読者を楽しませてくれる日常コミックエッセイが増えてきています」  おひとり様は婚活に焦っているはず、などという価値観はもう古い。今後は、様々な境遇・価値観のエッセイ漫画がさらに増えていきそうです。
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笑いが絶えないつづ井さんとの打ち合わせ
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