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夫はアスペルガーかも…泣き暮らす妻が陥った「カサンドラ症候群」とは

わかりあえない夫と暮らして vol.3】 未診断だけれども発達障害が疑われるパートナーとのコミュニケーションに悩んだ女性・イクミさんの体験談。 <前回のあらすじ> 極端に気持ちの通じ合わない夫婦関係に悩み、毎日泣き暮らしていたイクミさん(30歳)。友人に「目を覚ましてよ」と言われ、心療内科を受診。夫がアスペルガー症候群(自閉症スペクトラムと総称される発達障害の一種)ではないかと思い始める。夫を病院に連れて行こうと考える一方で、彼を発達障害と決めつけることに罪悪感を抱く。

どう頑張っても夫の「共感」を得られない

夫婦

写真はイメージです(以下同じ)

 日頃からイクミさんは彼に対し、「もっと共感してほしい」と思っていました。いくら伝えても彼は、「僕は他人に共感してほしいと思ったことがない」と言います。どうして共感してほしいのか説明しても、「共感されることの必要性がわからない」と言います。どうしてと泣いて訴えれば、「泣くほど共感を求めているの?」……。  こんなことを何度も繰り返すうちに、「イクミが求めることは僕には難しくてわからない、できない」と、困った表情で戸惑うようになってしまった彼が、どこか傷ついているように、悲しんでいるように見えて、イクミさんは胸が痛みました。私は彼に無茶を言っているのだろうか。寂しい、共感してほしい……そんなことを言って泣いている30歳の自分が、恥ずかしく惨(みじ)めでした。  会社で仕事をしていても、友達と食事をしていても、その日彼がどんな顔で帰宅するかを考えるようになっていました。彼の精神状態や、考えていること、感じているストレスによって、一緒に暮らすイクミさんは大きな影響を受けることになるからです。  ヒヤヒヤ・ソワソワしながら、ネガティブな感情に支配され続ける生活が、もはや乗り越えるべき試練とは感じられなくなっていたのです。お互いにとって、これは徒労ではないか? やはり彼はアスペルガー症候群ではないだろうか? 彼をアスペルガー症候群だと疑うことに、もう罪悪感を覚えなくなっていました

できる工夫を。夫との接し方を変えてみた

 そしてイクミさんは、彼とのコミュニケーションのとり方を変えました。  たとえば、 (1)彼にときどき起こる記憶の改ざんに対応するため、話し合うときは目の前で確認してもらいながらパソコンで議事録を取る。 (2)彼に言葉通りの意味で伝えるようにするため、あいまいな表現をやめて具体的な表現や数字を使う。 (3)人より疲れやすい彼のため、静かに休める環境を極力整える。 (4)彼の思ったまま発される言葉やそっけなく感じる態度にいちいち反応しない など……。 議事録 これらはすべて彼のためでもありながら、かつそれ以上にイクミさん自身のための工夫でありました。そしてこれらの工夫は、アスペルガー症候群の人との接し方からヒントを得たものでした。彼がアスペルガー症候群かどうかは定かでないものの、実際に接し方をこう変えたことで、彼とのコミュニケーションに関するトラブルが軽減したのは事実でした。 ――でも私は、これをいつまで続けられるのだろうか?

「カサンドラ症候群」という名の苦しみ

 自分の不安定な精神状態と、彼がアスペルガー症候群かもしれないことが無関係ではないと考えたイクミさん。今の自分に必要なのは、彼がアスペルガー症候群かどうかを明らかにすることよりも、アスペルガー症候群かもしれない彼とのコミュニケーションに苦しむ自分をケアすることだと考えました。 医師 そのためにまずしたことは、発達障害に詳しい医師がいるクリニックを探すこと。数ヶ月の予約待ちをしなければならないところも少なくありませんでしたが、何件も問い合わせをした結果、週内の予約が可能な、発達障害外来のあるクリニックを見つけることができました。効率的な相談ができるよう、彼とのコミュニケーションで困っていることや、なかでも特に困った例について、事前にまとめた1枚の資料を用意しておきました。  当日はその資料をもとに、自分が抱えている悩みと心の不調について相談したほか、紹介されたバウムテストという心理検査を希望して受けました。バウムテストの結果はあくまで自分の参考程度にとのことで、結果については簡単な説明を書いた紙を受け取るのみでしたが、結果は「重度の気分障害」……。医師からは、「カサンドラ症候群」の状態にある可能性が高いという指摘を受けます。 <カサンドラ症候群について> (以下、宮尾益知、滝口のぞみ監修『心のお医者さんに聞いてみよう アスペルガータイプの夫と生きていく方法がわかる本 “カサンドラ症候群”の悩みから抜け出す9つのヒント』より抜粋) ものごとの捉え方や感じ方が異なる夫とのあいだで、気持ちが通じ合えず疲弊していった状態。家族という愛情を基盤とする場で、夫からの思いやりや共感を得られず、周囲にも理解されづらいために孤立し、心身に不調をきたしていく。 カサンドラ症候群カサンドラ症候群の症状(精神編) ・抑うつ ・自己否定 ・無力感 ・イライラ・不安・恐怖 カサンドラ症候群の症状(身体編) ・頭痛がする ・疲れやすい ・動悸がする ・調理ができない ・集中できない ・突然涙が出る ・食欲がわかない ・胃痛がする ・眠れない (抜粋以上)

どうしても一緒にいたいなら、人生を賭ける覚悟で

 医師はこのようなことを言いました。  アスペルガー症候群をはじめ、発達障害の診断には、問診に加え知能検査や発達検査などの心理検査が必ず行われるということ。診断基準に加え、あらゆる要素を検討した上で、ほかの精神疾患と鑑別する必要もあり、最終的に診断が出るまでには時間が必要だということ。 検査 それから、周囲の人間はともかく、本人自身に困り感がないのならば、それは障害ではないという考え方もあるのだということ。 「仮にもしもご主人がアスペルガー症候群だったとしたら、ご主人は今後も基本的に変わりません。私はあなたの医師ですので、あなたの心が楽になる解決法を考えます。一番は、彼から離れることです。どうしても一緒にいたいということであれば、大げさでなく人生を賭ける覚悟が必要かもしれません。ご主人は変わりませんから、あなたが変わるか、あなたが彼に合わせるしかありません」 <文/佐藤 由実> 【参考文献】 宮尾益知、滝口のぞみ監修『心のお医者さんに聞いてみよう アスペルガータイプの夫と生きていく方法がわかる本 “カサンドラ症候群”の悩みから抜け出す9つのヒント』(大和出版)
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