夫は発達障害?傷つけあうより離婚すべきか…妻の決断は
【わかりあえない夫と暮らして vol.4】
未診断だけれども発達障害が疑われるパートナーとのコミュニケーションに悩んだ女性・イクミさんの体験談。
<前回のあらすじ>
夫と気持ちが通じ合えず疲弊していった結果、重度の気分障害と診断されたイクミさん(30歳)。そして、仮に夫がアスペルガー症候群だった場合、今後も彼は基本的に変わらないと医師に言われる。どうしても一緒にいたいなら、人生を賭ける覚悟が必要だとも。
医師の言葉は、イクミさんが心の奥底で感じているものと重なりました。
イクミさんにとっては悲しく、腹の立つことも、彼にとっては当然で、何の悪気もないということ。彼にとっては面倒で、ひどく疲れることも、イクミさんにとっては当然で、必要があると思っていること。二人を隔てるものは、個々人の価値観の違いというよりも、それぞれが根ざす世界の文化の違いのように思えます。一緒にいるだけで傷つけ合ってしまうのが、彼とイクミさんなのでした。
私達に夫婦という距離感は近すぎた。だから、離れるべきなんだ。
イクミさんが彼との生活を苦しく感じているのと同じように、彼もまたイクミさんとの生活を苦しく感じているということを口にするようになっていました。自然が不自然、親切がありがた迷惑、愛着が依存心……いちいち食い違ってはすれ違うお互いの心に、ストレスが少しずつ、確実に蓄積していくようすが目に見えるかのようでした。
それでもお互い、相手には何の悪気もないとわかっていることが厄介でした。意地悪な気持ちや悪意を感じれば、相手を嫌いにもなれるのですが、どちらもそのつもりがありませんし、誰も悪くないのです。イクミさんは、彼を嫌いになったわけではありませんでしたが、彼といる自分のことは大嫌いでした。
何度も話し合いを重ねた結果、イクミさんと彼は、これ以上お互いが苦しまないために必要なこととして、別れを選択しました。
悲しかったり、腹が立ったり、辛いことばかりが多かったのに、そのたびに何度も反芻(はんすう)してきた良い思い出の限られたいくつかを改めて思い出すと、イクミさんは胸が痛くなりました。けれどもそのたびに、パートナーと分かり合えない虚しさや、非生産的にすら思えてしまう生活から離れることが最良の選択だと思い直すのです。
そんなことを繰り返しているうち、徐々に一人の生活に慣れ、ふと泣かなくなった自分に気付きます。もともと滅多なことでは泣かなかったイクミさんは、久しぶりに本来の自分を取り戻せたような気持ちになったのでした。
「もしもあのとき別れずにいたら、お互いに恨み合って嫌いになって、もっとボロボロになっていたかもしれないです」
一緒にいるだけで傷つけ合ってしまう二人
わかりあえない夫を嫌いなわけじゃない。彼といる自分が大嫌い


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