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『グランメゾン東京』キムタク×山下達郎の再タッグ、地味さが絶妙な主題歌

 現在好評放送中のドラマ『グランメゾン東京』(TBS系、日曜夜9時~)。山下達郎(66)が歌う主題歌「RECIPE」が11月27日にリリースされました。『GOOD LUCK!!』(2003年)の「RIDE ON TIME」以来、木村拓哉(47)とのコンビが復活ということで、今回も注目を集めています。
山下達郎「RECIPE (レシピ )」

山下達郎「RECIPE (レシピ )」ワーナーミュージック・ジャパン

“いかにも名曲”ではない抑えた職人芸

 ところが、前回の「RIDE ON TIME」と異なり、「RECIPE」にはわかりやすいゴージャス感がありません。いかにも名曲然とした立派な構えを持たず、聞き流せてしまうほどに地味なのです。  とはいえ、むしろ抑えられた表現によって余韻が生まれているのが面白いところ。ここからは、「RECIPE」が示す、ドラマ主題歌の新たな可能性について考えてみたいと思います。  まず目につくのは、思い切りドラマに寄せた歌詞です。山下達郎は、曲と視聴者とドラマとの間に補助線を引いていきます。歌いだしでいきなり、<君のため選んだしあわせのレシピ>と、キーフレーズを持ち出した後は、<くちづけのテリーヌ>とか、<匂い立つフロマージュ>と、料理に関するワードを畳みかけていく。  一見するとベタすぎて気恥ずかしい言い回しですが、こうすることで“何のために作られた曲であるか”を、徹底的に刷り込んでいくのですね。モチーフが固まれば、視聴者は物語に集中できるからです。粋な表現技巧よりも、交通標識のような分かりやすさが優先されているというわけですね。  この“ダサい”歌詞に、従来のドラマ主題歌にはない明確な企図を感じました。

レストランで邪魔にならない曲

 次に、サウンドと楽曲の物足りなさが絶妙でした。と言っても、質が悪いという意味ではありません。むしろその逆で、“もっとガツンとくるサウンドだったらなぁ”とか、“これで楽器の数が多かったらどんな感じだろう”とか、“サビのメロディ、もうちょい聴きたいな”といった具合に、聴き手の欲求を満たしきらないで途切れてしまう、イジワルな物足りなさなのですね。  たとえば、サビの<しあわせのレシピで しあわせを作ろうよ>以下の部分だって、本当ならばもっと気持ちよく歌い上げられるコード進行やメロディの展開があり得たはずです。  でも、ここでも山下達郎は、それをしなかった。なぜなら、『グランメゾン東京』はレストランを舞台にしたドラマだからです。想像してみてください。お店で食事をしているときに、いかにもお涙ちょうだいの壮大な曲が流れてきたらどう感じるでしょうか? やたら元気のいいビートが打ち鳴らされたら? 食欲が失せちゃいますよね。
レストラン

画像はイメージです

押しが強い主題歌がいいとは限らない

「RECIPE」がスカスカで尻切れトンボに聞こえるのは、場の雰囲気に調和させるために、音に余白を持たせているからなのですね。ここでも、音楽が視聴者に対して補助線の役割を果たしていることが分かります。  長らく、名作ドラマには同じぐらい押しの強い楽曲で盛り立てるという考え方が主流でしたが、「RECIPE」はそんな傾向に一石を投じる楽曲だと感じました。決して目立たないけど、なくてはならない隠し味。まさに、山下達郎らしい職人気質に感服するのでした。 <文/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)
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