平日でもやたら実家に帰る夫。夫婦の旅行先も親に相談…妻の胸の内は?
一般的に「家族思い」と聞くと、ポジティブなイメージを持つものではないでしょうか?ところが、裏を返すと良いことばかりではないようで…。
都内で働くアキさん(仮名・30歳)は、同い年の夫と結婚して2年目。夫婦仲はいたって良好ですが、結婚当初から今に至るまで、ずっと不満に感じ続けていることがアキさんにはありました。
それは、夫がやたらと実家に帰りたがること。
「私と暮らす家の居心地が悪いから実家に帰りたがる、という訳ではない……と思ってます。もしかしてそうなのかな? と思って夫に訊いたことがあるんですが、そうじゃない、って。『実家も夫婦の家も両方俺の家で、両方好きなだけ』って言うんです」
そんな夫の実家は、夫婦で暮らす都内のマンションから、電車で片道1時間半の千葉県にあります。夫の実家と夫婦の家のほぼ中間地点に夫の会社があり、アキさんが仕事や付き合いで夕飯を作れないとなると、たとえ平日であっても、
「『じゃあ今日は実家に行ってるわ。帰り気をつけて!』ってLINEが来ます。会社からそのまま実家に帰って、お義母さんのごはんを食べて、泊まりですね」
夫が行っているのは本当に実家なのか?――そんな疑いがよぎったアキさんは、義母に連絡を入れて確かめたこともあるのだとか。
「結婚当初は、一応お義母さんに連絡して、家にいるのかそれとなく確認したりしてました。今もときどき確認しますが、基本的に夫はお酒が飲めないし、交友関係も狭いので、嘘をついて他で遊んでるということはないと思います」
実家で過ごした夫は、帰ってくるときまって、実家でのことをかたっぱしからアキさんに聞かせます。両親と話したこと、両親と見たテレビ、両親と食べたごはんのことなど、とにかく実家のことばかり。
付き合っているあいだは、ここまでひんぱんに実家に帰っていたとは知らなかったというアキさんですが、家族仲が良いことだけは知っていて、「家族思いな人」と好意的に受け止めていたと話します。けれども今となっては、単に「親離れできていない人」という印象に変わってしまったそう。
「夫は一人で実家に帰ることが多いですが、お盆やお正月には、私も一緒に行くんです。逆に夫は、私の実家へは結婚の挨拶のときに行ったきりですね。母の日・父の日なんかも、夫が気にしてるのは夫の親への贈り物だけなので、私の親のこともちゃんとやってほしいって言いました」
アキさんはあきれ顔で続けます。
「ゴールデンウィークとかシルバーウィークとか、長期休暇に夫婦で旅行に行きたいなって提案しても、『いいね。前半と後半どっちに行く? どっちか半分は実家に行こうと思ってるんだけど』って言われちゃうんですよ。夫婦の予定よりも実家に帰る予定のほうが早く決まってるんだなと思うと、寂しいやら、虚しいやら……」

ちょっと実家に帰りすぎじゃない? というアキさんの不満に対し夫は、「息子が帰ってきたら親は喜ぶよ」「親孝行のつもり」と全く動じないとのこと。どうやら夫の両親としても、ひんぱんに帰ってきてくれる息子が可愛くて仕方がないようなのでした。
「末っ子で、家族でいちばん良い大学を出て、大手企業に勤めてる息子なので、可愛いんでしょうね。いつでも帰ってきたらいいよ、って言ってるらしいです。結婚して新しい家庭があるんだから、あんまり帰ってくるな、って言ってほしいんですけどね……」
最近になって、昇進の報告や夫婦で行く旅行先の相談を、アキさんより先に自分の両親にしていたということも明らかになったと話すアキさんは、さすがに少し疲れた様子。
いい加減、親離れ・子離れしてほしい――。そう願いながらも、夫婦間の「実家」に対する価値観のズレはなかなかうまらなそうだと半ばあきらめ始めてもいるようです。
―シリーズ「帰省の悲喜こもごも」―
<文/船田 ゆかり イラスト/ただりえこ>
平日も実家に泊まり、帰ってきたら実家話ばかり

妻の実家には無関心
