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椎名林檎の東京事変、ライブ決行は無責任?カッコいい?

 いまだ収束する気配を見せない新型コロナウイルス。政府からの自粛要請を受け、EXILEやPerfumeが公演当日に中止を発表するなど、混乱が広がっています。
東京事変 DISCOVERY

東京事変『DISCOVERY』(ブルーレイ、ユニバーサルミュージック)

 そんな中、椎名林檎(41)率いるバンド「東京事変」が2月29日と3月1日の東京国際フォーラムでのライブ決行を発表し、賛否両論が巻き起こっています。ツイッターには、「ロックだな」とか「かっこいい」と擁護の声が見受けられる一方、ヤフーニュースのコメント欄には「日本を代表するアーティストの決断とは思えない」とか、「無責任だ」との否定的なコメントに共感が集まっているのです。  バンド側は、来場したくないチケット購入者には返金するとアナウンスしており、“自粛要請”というぼんやりとした表現の中で、最大限誠実な対応を取っていると言えるのではないでしょうか。

東京五輪に食い込んでいる椎名林檎が…

 とはいえ、椎名林檎が『東京2020オリンピック・パラリンピック』の「4式典総合プランニングチーム」の一員であることに引っ掛かる人もいるかもしれません。つまり、東京五輪の中枢にがっつり入り込んでいる人物がすすんで“自粛”しないでどうするんだ、とツッコまれる可能性ですね。なかには、“論功行賞の特例で許されたんじゃないか”なんて考える、疑い深い人もいるんじゃないでしょうか。  当然、最終的には主催者の自主判断なので法的には何の問題もありません。それでも、延期か中止かと言われているこの瀬戸際で、大会の運営に携わる張本人が、長時間に渡り数千人を箱に閉じ込める肝っ玉の据わりっぷり。音楽はさておき、姿勢がロックですばらしい!?  もちろん、こうした議論が起きてしまうのは、現場に判断を丸投げした政府のせいです。観客を入れたライブを中止し、ネットでの配信を決めたバンド「打首獄門同好会」が、「他のバンドにも同じことを求めないように」とツイートしたのも、市民同士が動向を監視し、“自粛”を強制し合う負の連鎖を危惧してのことでしょう。
東京事変「スポーツ」

東京事変 CD「スポーツ」2020年2月26日発売(Universal Music)

ライブ決行の意図を発表しては?

 さて、こうした不信が不信を呼ぶ事態に陥ったとき、求められるものは、アーティストの肉声です。多くのミュージシャンやグループが泣く泣くライブを中止する現状において、それでも2月29日と3月1日に行わなければならない理由を、自身の言葉で訴えることはできないのでしょうか?  東日本大震災の際、椎名林檎は、これでもかと心のこもった美しい日本語風の不思議な言語で、被災者を見舞うメッセージを発表していました。 <どうか確かに生きてらしてくださいませ。案じて居りますし、お気持ちしっかり、よろしく お頼み申し上げます。>  度重なる余震におびえ、食うや食わずの日々に耐える人たちにも、“アーティスティックな私”のアピールに余念がない“迷文”でした。  今回の新型コロナウイルスの流行が、東日本大震災に匹敵する国難であるかどうかはさておき、国家の一大プロジェクトの中心にいる人物が、国家の一大事に巻き込まれてしまった以上は、それなりの声明を発表し、コンサート開催の正当性を説明するぐらいはしてもいいのかもしれません。  被災者への“お手紙”も表現活動の一部に昇華させた椎名林檎なら、なおさらでしょう。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)
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