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佐藤健、柄本佑、向井理。“令和のイケメン”像を冬ドラマに見た

 1月期のテレビドラマを振り返って、強く印象に残ったのは、ドラマに欠かせない“イケメン”のあり方の変化であった。簡単に言うと“イケメン”が“イケメン”のままでいい時代は終わりを告げ、“イケメン”はひとつの“芸”になったということである。  それを示してくれた俳優は3人。佐藤健と柄本佑と向井理であった。3人とも偶然、3文字名前であるがそれはともかくとして、1月期のドラマで佐藤と柄本は様式美としての“イケメン”を演じ、向井理は自らの“イケメン”性をあえて封じていたように思う。

エンタメとして最高峰のイケメンを演じた「佐藤健」

佐藤健『恋はつづくよどこまでも』

(画像:Paraviオリジナルストーリー『まだまだ恋はつづくよどこまでも』ニュースリリースより)

 佐藤健は病院を舞台にしたラブストーリー『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)で、少女漫画が描く、憧れの男性像をパーフェクトに演じきった。「魔王」と呼ばれるエリート医師・天堂(佐藤)は壁ドン、顎クイ、バックハグなど定番の恋愛仕草でヒロイン(上白石萌音)を骨抜きにしてしまう。何かと腰に手を当てるポーズからキスの仕方まで、佐藤健の動作は弓矢で的のど真ん中を射抜くような正確さでヒロインのみならず女性視聴者の心を捉えた。  佐藤は何もしなくても美形ではあるが、素材に甘えず、サービス精神を発揮したのである。ほぼ毎週、コートを着替えていたことも見どころで、最終回に至っては4着もお召し替えしていた。おそらく、病院ではどんなに翻し方が華麗でも白衣ばかりだと味気ないので、私服では様々なコートを翻して楽しませてくれようとしたに違いない。このように佐藤健は、エンターテインメントとして最高峰の“イケメン”を徹底的に演じてみせたのである。

理想のイケメン像を作り上げた「柄本佑」

 柄本佑も“イケメン”を徹底的に研究し、身体表現の技術を総動員して演じようとしていたように感じる。スクープを追う週刊誌の編集部を舞台にした恋とお仕事ドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ)。柄本佑が演じるのは週刊誌のカメラマン・尾高。主人公(吉高由里子)の同僚で元カレだが、別れた後、結婚して子供もできたにもかかわらず、主人公と再び惹かれ合ってしまう。主人公は仕事や私生活で様々な背負うものがあり、尾高は何かと支えになる。
 柄本佑は名優・柄本明と故・角替和枝夫婦の間に生まれた演劇サラブレット(妻は安藤サクラ)で個性的な演技派として知られていたが、『知らなくていいコト』では、眉が隠れるくらいの前髪のふわっとした髪型で、肌は美肌に整えられ、瞳は照明でキラキラ光らせ、ささやきボイスで、佐藤健と同じく、何度となく2枚目ポーズを決めて見せた。  とりわけ海で吉高由里子に自分の着ていた上着を着せる仕草は堂に入っていて、尾高沼にハマる視聴者が続出した。柄本佑もまた、ドラマのなかで主人公がどうしようもなく惹かれてしまう色っぽい男という役を、見た目から徹底的に作り込んだのである。いつもの自分が求められるものとは違う役を演じることは、俳優として面白い挑戦だったに違いない。

あえて“イケメン”を封じた「向井理」

 理想のイケメン像を形態模写のように演じてみせて、どちらも高評価を獲得した佐藤健と柄本佑に対して、一時期、イケメンブームのトップを走っていた向井理には、イケメンとしての存在価値とは違う方向性を模索しているように感じるものがあった。
向井理『10の秘密』

(画像:GYAO『10の秘密』連動企画リリースより)

 ミステリードラマ『10の秘密』(フジテレビ系)で向井が演じたのは妻に離婚されたシングルファザー。実直な人物で、謎多き元妻(仲間由紀恵)に振り回され、事件に巻き込まれていく。向井理は背が高く、いわゆる“シュッとした”俳優。ちょっと伏目がちにしたときの表情が甘く、頭の良さそうな清潔感のある美青年という雰囲気があり、ただそこにいるだけで“イケメン”として存在できてしまう。  だが、もともと、能動的に演技を盛っていくタイプではなく、感情の動きを大事にするタイプのようで、このドラマでも、ひたすらナチュラルに実直なシングルファザーを演じようとしていたと思う。このドラマにおいて“イケメン”部分は彼にとってむしろ不要だっただろう。だが、大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)足利義輝では、滅びかかった室町時代の将軍という退廃美のようなものを醸していて、それはそれで、彼だからこそ出せるものなのである。
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美しさよりも危うさで魅せた「安藤政信」
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