カタログブックでみつけた、HERMESの「シエスタ」シリーズやSTAUBのタジン鍋 【日々の雑器 Vol.8 茅野裕城子】

<茅野裕城子【日々の雑器】Vol.8>

いつからともなく、どこからともなく、わたしの回りには、さまざまな器が集まってきてしまう。

基本的にはずっと断捨離中ではあるのだが、それでも、旅する先々で、骨董市で、あるいは、実家のガレージの片隅に捨てられそうになっていたのなど、どうしても手にとって、持ってきてしまうものがある。

本当は、白い機能的で形のよい食器のストックがあれば、それでいいのかもしれないけど、人間、それじゃあ、飽きてしまう。

かといって、わたしは高級ブランド食器のフルセットとかも、持ちたくない。雑多で不揃いな器で、日々の食事をするのが楽しい。使っていると、器たちは少しずつ、なにかを語りかけてくる……。

Vol.8 結婚式やお葬式のお返しに……と送られてくるブックからを器を物色するたのしさ



すべての持ち物を減らすことを前提に暮らしているので、ものすごく思慮を重ねた挙げ句でなければ、ちょっとやそっとで、新しい食器など買うことはない。しかし、ときどき、魔が差したように、ポンと決めてしまうときがある。そのひとつが、結婚式やお葬式のお返しにと、送られてくるブックから、気に入ったものを選べというシステムのを見ているとき。わたしは、どういうわけか、このブックを見るのが大好きで、一応、全ページチェックしないと、気が済まない。

高齢者は、友だちも頻繁に亡くなるわけだし、とにかく、うちの親のところには、常にこういうブックが届き、そのままにしていたら、絶対に一度も使わないで、ゴミになっていく小家電やらなにやらが送られてきてしまうので、あるときから、わたしが、ブックが届いたら自分で見るようになったのかもしれない。

そこには、たいてい、お金をもらってもいらないような、あきれるような商品が、脈絡なく並んでいる。そんな場合、食品という選択肢があるのでいいけれど、それでも、何か欲しいものないかなあ、とぱらぱらめくっていると、あっ、と思うようなものを発見することが、稀にある。

夜中に帰ってくる人を待つ小さなのタジン鍋の幸福感



タジン鍋このSTAUBの小振りのタジン鍋は、そうやってみつけたものだ。これで、モロッコ料理のタジンやクスクスをつくるのはもちろんだが、ふたり分くらいのポロ(中央アジアの炊き込みピラフのようなもの)もつくれるし、なんといっても、ふたりすき焼きにぴったりの大きさで、重宝している。

あとは、夜中に帰ってくる人に、鍋を残しておいてあげる場合などにもよい。温め直すのもすぐだし、なにより、タジンの蓋を開けたときの、幸福感が格別だからだ。小さなタジンは、あまり売っていないので、よく、ブックでこんなものをみつけたな、と自分を褒めている。

ポロもっと意外なものも、ブックからみつけた。それが、HERMESの「シエスタ」シリーズのマグカップだった。

本当に、ブックに記載されている商品は玉石混淆。これは、お店で見ていて、欲しいなと思っていたものだったから、嬉しかった。そして、そのマグカップでコーヒーを飲むとき、自動的に、お香典のお返しをくれた(本人がくれたわけではないですが)父の友人のそのおじいさんのことを、自分はほとんど挨拶する程度の知り合いでしかなくても、毎回思い出すから不思議である。

エルメスシエスタマグそう考えると、ブックから選ぶギフトというのも、捨てたモノでもない。これは、ひとえに「物色する楽しさ」が重要なシステムなのだ。なにも迷わず、松坂牛のセットにすることもいいし、手元に残る気に入ったなにかをみつけて選んでしまうという選択も、それはそれで、またいい。

<TEXT/茅野裕城子>

茅野裕城子/ちの ゆきこ作家。東京生まれ。『韓素音の月』で第19回すばる文学賞受賞。『西安の柘榴』など、中国に暮らした体験をもとに、日中間の誤解や矛盾を描く作品が多い。また、ビンテージ・バービーのコレクターでもあり、『バービー・ファッション50年史』(共著/扶桑社刊)などの研究書も。このところ、キルギス、モンゴルなど中央アジアを旅することが多く、好物は、羊!

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