しかし、ソニーグループも女子アナも、いずれも倍率の高い大企業のひとつ。「結局顔がよければいい企業に就職できるんだ」「自分が面接官なら、一生懸命勉強していい大学に入って就職活動を頑張っている普通顔の女性と元アイドルの2人が目の前にいたら元アイドルを選ぶ。周囲の男性社員も仕事を頑張るし、人は集まるし」といった羨望や嫉妬のコメントも多く寄せられています。こうした現状を見ると、元アイドルを活用して優秀な人材を集めたい企業と、ルックスや知名度を活かしつつ一般企業で働きたい元アイドルのニーズが一致しているという見方もできるでしょう。
否定的な意見が今回多かった背景には、日本どころか世界でも有名なソニーグループで山木さんがキラキラとした仕事をしているように見えるからこそ、生まれてしまっている可能性も。例えば、同じく元ハロプロでBerryz工房のメンバーとして活躍した「ももち」こと嗣永桃子さんは小学校と幼稚園の教員免許を取得し、「幼児教育の道に進みたい」として2017年に芸能界を引退。また、モーニング娘。の元メンバーの鈴木香音さんは「介護福祉の仕事につくための勉強をしていきたい」として2016年に芸能界を引退しました。この2人は芸能界引退後、メディアへの露出を避けて完全に一般人として生活している様子が伺えます。

画像:嗣永桃子 ラスト写真集 『 ももち 』(ワニブックス)
このように、ケアワークに従事したり、一般人として顔出しや現在の状況をブログ等で発信していなかったりする元アイドルに対しては批判的な意見がほとんど見られず、むしろセカンドキャリアを応援する声が圧倒的です。しかし山木さんに対しては、「名前と顔を出して注目を集め、人を集めて……やっていることは会社員ではなくアイドルでは?」という意見が出るのも仕方がないのかもしれません。

画像:慶応義塾大学 プレスリリースより(PR TIMES)
ただし、山木さんには元々2016年に慶應義塾大学商学部に入学するなど、アイドル活動と学業を両立してきた実績があります。慶應義塾中等部出身で、ファンからはお嬢様や才女として知られる存在でした。カントリー・ガールズ在籍時代にはMCの上手さやクレバーな立ち回りが注目されていたため、ソニーグループへの入社も「山木さんならありえる」として納得する声が上がるほどでした。元アイドルでなくても、山木さんが普通に就職活動をして同社に入社する可能性も十分にあったのではないでしょうか。
男性アイドルと比べ、女性アイドルは活動期間が短いと言われます。推しが30代や40代になっても、結婚して子どもができても応援を続ける女性ファンに比べ、推しが求める年齢層でなくなったり、恋愛や結婚など自身の人生を歩み始めることでファンを離れる男性ファンも少なくありません。その中で、女性アイドルがセカンドキャリアを見据えながらアイドル活動をし、卒業後に新たな仕事に就くという流れは、多様性が尊重される時代において良い傾向と言えるでしょう。山木さんが一般企業で働きながらその事例を作り上げることで、今後の女性アイドルのセカンドキャリアの可能性を広げる役割を果たすかもしれません。
<文/エタノール純子>
エタノール純子
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中