そもそも文化の盗用が問題視されるのは歴史的に支配する側だったり多数派だったりした文化圏の人が、支配される側だったり少数派だったりした文化圏の文化を無断で使うときです。
多様な人種が集まるアメリカにおいては、白人がアフリカ系アメリカンやネイティブアメリカンの文化を本来の意味や文脈を無視して使うときにとりわけ大きな問題として反発を買うのがわかりやすい例でしょう。
アジアにおいても例外ではなく、かつてキム・カーダシアンが補正下着ブランドに「KIMONO」という名前を付けようとした際には、「世界的に『KIMONO』という言葉が日本の伝統的な着物ではなく補正下着として認識される危険性がある」として猛バッシングが起こったことがありました。

キム・カーダシアン 画像:E!Zone Japan プレスリリースより(PR TIMES)
しかし、今回のHearts2Heartsの件では、プリントシールというポップカルチャーをそのままの形でティーザー画像に採用しており、「文化の盗用」に該当するとは言い難いと考えられます。
むしろ、日本の平成文化を積極的に採用し、そのままの形で世界へ発信している様子は日本へのリスペクトという見方もできます。
なお、IVE(アイヴ)の日本人メンバーであるレイさんが平成ギャル文化を好み、韓国の若者にギャルピースというポーズを広めたとされるエピソードもあります。

IVEのレイさん 画像:Aekyung Ind. Co.,Ltd.プレスリリースより(PR TIMES)
このことから、日本の平成文化が日本国内だけでなく韓国でも人気であることがうかがえます。また、プリントシール風の画像が受け入れられると予測したHearts2Heartsのマーケティング戦略の一部であることも明白です。
現在ではK-POPアイドルに日本人メンバーがいることは珍しくなく、J-POPにおいてもK-POPの要素を取り入れるなど、日韓は音楽やファッションなどのポップカルチャーで相互干渉を進めながらよりよいものを生み出している関係性と言えるでしょう。
とはいえ、今回これほど多くの人々が反発的な感情を抱いているのは「韓国に日本の文化を模倣されること」に否定的な感覚が広がっていることの表れです。
「反日思想を持ちながら日本文化を模倣するな」という意見も多く、K-POPが日本で受け入れられているにもかかわらず、韓国や韓国人に対して否定的な感情を抱く人が一定数存在していることが明らかになりました。
「文化の盗用」か否かが問題ではなく、「韓国に模倣されること」そのものに対する拒絶反応が問題となっているのです。今回の騒動は、日韓ポップカルチャーの相互干渉というプラスの側面をかき消すほど、日本国内における「韓国が日本文化を模倣すること」への拒絶反応を露呈させた形となりました。
<文/エタノール純子>
エタノール純子
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中