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「腸活がんばってるのに太った…」食物繊維だけではNGなワケ

ここ数年、ブームとなっている「腸活」。腸内環境が整うと便秘や下痢が改善するほか、肌の調子がよくなったり、免疫が整ったり、体にいいことずくめ。気になっている人も多いのではないでしょうか? お腹の不調かくいう筆者も長年の便秘とお別れすべく、腸活にトライしてみました。便秘改善といえば食物繊維だろうと、ゴボウやレンコン、切り干し大根などをモリモリ食べたのですが、正直、いまひとつ変化が感じられず。むしろ、おなかがはっているような気も……。 私は一体、何を間違えたのでしょうか? そこで、正しい食物繊維のとり方について、腸内細菌と免疫研究の第一人者である國澤純先生(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所・副所長ならびにヘルス・メディカル微生物研究センター センター長)を取材。 國澤先生に、食物繊維が腸でどのような役割を担っているのか、そのメカニズムや効果的なとり方と、身体の中で役立つために欠かせない“あるモノ”について教えていただきました!

食物繊維だけじゃダメな理由

「実は、ヒト単独では食物繊維を十分に活用することができません。食物繊維とは『消化酵素で分解できないもの』の総称で、ヒトは自力ではエネルギーや栄養にすることなく、大腸まで運ばれる食品成分です。そのためこれまではせいぜい、便のかさ増し程度の存在と考えられていましたが、腸内細菌の研究が進むつれ、その重要な役割が明らかになってきました。 多くの日本人は食物繊維が圧倒的に足りていませんから、意識してとることはとても大切です」(國澤純先生:以下同)
國澤純先生

國澤純先生

そう國澤先生が指摘するように、日本人の食物繊維不足は深刻で、現在の日本人の食物繊維摂取量の実態は、10~13g/日程度(※)とWHO(世界保健機関)が推奨する25gからは程遠いのです。こうした背景から、厚生労働省は2025年度からの食物繊維目標摂取量を改訂。意識してとることを呼びかけています。 ※平成30・令和元年国民健康・栄養調査「食物繊維摂取量」(中央値) 食物繊維摂取量とりあえず、食物繊維をとること自体は間違ってはいなかったようで一安心。でもなぜ、便秘改善の効果を実感できなかったのでしょうか? 「近年明らかになった食物繊維の重要な役割とは、腸内細菌のエサとなってカラダに良い物質を産み出す源として、私たちの健康をサポートしてくれることです。 腸内細菌が食物繊維を材料に産み出すのは、酢酸や酪酸、プロピオン酸などの『短鎖脂肪酸』。これらは、腸のエネルギーになったり、免疫の暴走を抑えたりしてくれる有益な物質。この短鎖脂肪酸を作るには大腸内での『菌のリレー』が必要で、食物繊維だけがあればいい、という話ではないのです」 先生によると、腸内細菌は単独ではなく“分業制”で働いており、それぞれがそれぞれの役割を果たし、バトンをつなぐかのように次のステップへ代謝物を渡しているそう。そんな「菌のリレー」は3ステップで進み、それぞれを担う“走者”は次の腸内細菌たち。 第1ステップ:納豆菌や麹菌などの糖化菌。食物繊維を糖に分解する。 第2ステップ:ビフィズス菌や乳酸菌など。糖化菌が分解した糖を材料に、乳酸菌は乳酸を。ビフィズス菌は乳酸に加え、短鎖脂肪酸の酢酸を作る。 第3ステップ:プロピオン酸や酪酸の産生菌。ビフィズス菌が作った酢酸などを材料にして、プロピオン酸や酪酸などの短鎖脂肪酸を作る。 菌のリレー「第3走者となる酪酸菌がいないと、酪酸を作ることはできません。しかし、酪酸菌がいても酪酸が作れないときがあります。それは、第2走者を担うビフィズス菌などの酢酸を作る菌がいない、あるいはその数が少ないとき。そうなると糖から酪酸菌のエサとなる酢酸を作ることができず、菌のリレーのバトンが途絶えてしまうのです」 さらに、第2ステップが機能しないということは、第1ステップで食物繊維を材料に糖化菌が作った糖が腸内に溜まるということ。せっかく食物繊維をとっても、糖がどんどん蓄積してしまい、その結果、血糖値が上がり、なんと、肥満につながる危険性があるかも?! 糖が蓄積とかく、リレーでは先頭を走るトップランナーや、ゴールテープを切るアンカーが注目されがちですが、間をつなぐランナーがいなければそこで失格になってしまいます。腸内の菌のリレーも同じ。その間で働くビフィズス菌などの第2走者も欠かせない存在なのです。 「腸内細菌は周りと連携し合いながら、有益なものを作り上げています。『腸内フローラ』というお花畑はいろんな種類の花が咲いているのが理想ですが、その中のたった1種類の花が失われただけで、さまざまな花に影響が出てしまうのです」

食物繊維をより効果的にとるためには?

では、菌のリレーを成立させるためには、材料となる食物繊維をどう摂取すればいいのでしょうか? 「大切なのは、いろいろな食物繊維をとることです。第1走者となる糖化菌にも好みがあります。同じ食物繊維ばかり食べていると、その食物繊維が好きな菌だけが増えてしまい、腸内フローラのお花畑の多様性は失われます。『ごぼうを食べておけばとりあえず大丈夫』ということはないのです」 食物繊維が豊富な食材は、ごぼう以外にも野菜だったら大根、玉ねぎ、セロリなど。豆類や穀類、きのこや海藻類にも多く含まれていますし、果物ではキウイフルーツが代表選手。こうした、さまざまな食材の中からバリエーションをもって食べることが大切なのですね。 「食物繊維との相性は人それぞれです。他の人では調子のよいものでも、自分には合わないことがあります。食べて調子が悪くなるものは避け、『これを食べるとなんか調子がいい』という食材を見つけ、自分にとっての“手持ちカード”を増やしていく。その中からいろんな種類を食べるといいですよ」

ヨーグルトで、腸内の「ビフィズス菌」をサポートしよう!

そして、第2走者となるビフィズス菌。実は、ビフィズス菌の数は個人差が大きく、腸内にものすごくたくさんいる人がいれば、ほとんどいない人もいます。それは乳幼児期に決まり一生涯続くと考えられているそうです。 腸内で第2走者としてしっかり働いてもらうためには、意識してとる必要がありそうです。 「ビフィズス菌が極端に多い人でなければ、自前のビフィズス菌を増やして、常に十分な量をキープするのには限界があります。外からとる必要があるのですが、ビフィズス菌は酸素が嫌いなので一般的な食品にはほとんど含まれていません。手軽にとるにはヨーグルトが選択肢となります」 ただし、ヨーグルトであればすべてビフィズス菌が含まれているというわけではないので、「ビフィズス菌入りのヨーグルト」を選ぶのがポイント。しかも、ヨーグルトでとりいれたビフィズス菌は腸で働いた後、2~3日で排出されてしまうため、腸内にビフィズス菌をキープしておくためには、日々とりいれることが必要なのだそう。 「食べる頻度はおなかの調子にあわせて人それぞれで良いと思いますが、ビフィズス菌入りのヨーグルトをコンスタントにとることはとても大事です。おなかとの相性をみて選んでください。ビフィズス菌が少ない人は意識してとるだけで、効果がてきめんにでると思いますよ」 スッキリ快腸2

「腸活」は無理せず、ゆる~く長~く続けることが大切

そうなると、がぜん気になるのが、腸内細菌研究の権威である國澤先生はどんな風に食物繊維をとっているのかということ。 「私自身が食べているのは、具だくさんお味噌汁です。味噌は発酵食品ですし、冷蔵庫の残り野菜を具材に使うことで、日替わりでさまざまな食材がとれます。このお味噌汁とビフィズス菌入りヨーグルトをほぼ毎日。これをベースに、納豆をプラスしたり、週に数回もち麦を食べたりして、バリエーションを出しています」 なるほど。日替わりの具だくさんお味噌汁+ビフィズス菌入りヨーグルトなら、食べ飽きることはないですし、なにより手軽なのは魅力です。 「腸活は一生続くものですから、頑張りすぎず、うまく日常に取り入れてほしいと思います。特定のものだけを食べて、他はほとんど口にしないという方もいますが、体も腸も栄養不足になってしまう危険性があります。ストイックになるのは逆効果。普段の食生活の中で、『菌のリレー』のバトンがつながるよう少しだけ意識すればいい。ゆる~く長く続けるのがいちばんです」 ヨーグルト根菜系の食物繊維ばかりを食べていた私の改善点は、食物繊維をバリエーション豊かにとること。そして、途絶えていた「菌のリレー」をつなぐため、ビフィズス菌入りのヨーグルトをプラスすること。さっそく、今日からはじめてみるつもりです。 腸活の秘訣を もっと知りたい>>>◆ただいま抽選で10名に「1000円分のeギフトカード」が当たるアンケート企画を実施中です。 今回の記事を読んだ感想をお寄せください! 回答は約3分!ぜひご回答ください。 1000円分のeギフトカードが当たる! アンケートはこちらから>>>応募締めきりは【2025年4月30日(水)23:59】まで <文/小山武蔵 イラスト/やましたともこ 提供/大腸劣化対策委員会>
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