選挙で彼氏と大ゲンカ。投票先って絶対秘密?オープンに話し合うべき?
人の常識って、ほんとに人それぞれですよね。誰かと付き合っていると、その「常識」があまりに異なることに驚きます。
話を聞かせてくれたのは、Tさん。当時、仲良く付き合っていた彼とまさかの大げんかをしたと言います。
その内容が、なんと選挙。
「一緒にお風呂に入りながら、何気なく『明日、選挙だね。どこに入れるか決めた?』って聞いたんですよ。そうしたら突然、逆鱗に触れて。
『なんでそんなことを聞くの?』って。訳がわかりませんでした」
Tさんは、選挙前になると物知りの父親に電話をして情報を教えてもらい、投票の参考にするほどオープンな家だったそうです。
「選挙後に家族が集まったら、どこに入れたか報告しあい、その理由を語り合うことも普通でした。
家族だけではなく、大学の先輩にも『どこに入れようかな』なんて相談をしていたんです。なので彼がなぜ突然怒りだしたのか、まったく予想外でした」
一方の彼氏の実家では、まったく状況が違ったそうです。
「彼いわく『僕の家では、誰に入れたかといった選挙の話はタブーだった。そんな話をするなんて信じられない!』だそうです。『誰に投票するかはプライバシーと信念の問題。人に話すものではない』とのこと」
選挙前になると疎遠だったクラスメートから突然連絡が来て「この政党に入れて」なんて言われることがありますよね。
選挙あるある迷惑話のひとつですが、こうしたネガティブなイメージから「選挙関係の話はしない方がいい」という人もいるのでは?
「西洋では、政治の話を積極的に議論します。自分がどういう考えで、何を支持しているのかという話は、相手を知る上でとても大切です。
例え相手と自分の意見が異なったとしても、それはそれ。『そういう考え方もある』と思えばいいし、新しい視点を与えられたなら、考え方を変えたっていい。
自分ひとりの情報なんてたかが知れているし、いろんな意見を聞いて決めるのは悪いことではないでしょう。
選挙についてオープンに話し合えないことも、投票率の低下の原因のひとつではないでしょうか。誰かに影響されたとしても、それがその人の意志ですから問題ありません。意思表示しないことよりよっぽどマシなはず。
やっぱり私には、なぜ話してはいけないことなのかがわかりませんでしたが、彼も同じく『なぜ話せるのかがわからない』といった風で平行線でした」
仲良く一緒にお風呂に入っていたのにもかかわらず、選挙ネタのひと言ですっかり口論になってしまい、お湯も気持ちも冷え冷え。黙ってお風呂から上がり、服を着て、彼はそのまま自宅へ帰っていったそうです。
「支持政党が自分と異なろうが構いません。異なる意見でも、相手を尊重していればいいんです。だけどそれ以前に『投票について話さない』とシャットアウトされてしまうなんて。
それはさすがに尊重しきれませんでした。もうまったく理解ができない。テレビの開票特集を見ながら、どんな話をするのかしら?」
それ以降、なんとなくすれ違いが増えたという2人。そのまま別れてしまったそうです。
相手を尊重しきれない間柄だったことが早めにわかってよかったのでしょうか? それとも、やっぱり選挙については話すべきじゃなかったってことでしょうか……?
―夫婦・カップル間のマジ喧嘩 vol.1―
<TEXT/和久井香菜子 ILLUSTRATION/やましたともこ>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】

選挙の投票先をたずねたら彼氏がマジギレ

選挙の話をするべきだという彼女の言い分

選挙でケンカの後、スレ違いが増えて破局
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表