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アメリカで禅を広めた、知る人ぞ知る日本人老師の教え

 数年前から、仏教ファンが増えている、と言われています。檀家制度とか葬式云々とは別に、なんとなく今の自分に居心地の悪さを感じる人が、仏教本を読んだり瞑想・坐禅をする――。仏教関係の講演や法話会に行くと、たいてい盛況でビックリします。

鈴木老師,禅

鈴木老師、タサハラにて(1969年)。Photo by Rowena Pattee Kryder. 『禅は、今ここ。』より)

 また、2011年に亡くなったスティーブ・ジョブズが禅にハマっていたということで、禅に興味を持った人も多いそうです。個人的には、欧米セレブのお墨付きがあると飛びつくのもどうかとは思いますが、一つのきっかけになったのは事実のようです。

 ジョブズの愛読書だった『zen mind beginner’s mind』(鈴木俊隆=しゅんりゅう=著)の邦訳『禅マインド ビギナーズ・マインド』(サンガ新書)も売れ行き上々だとか。この本は世界的ベストセラーなのですが、著者の鈴木俊隆って誰? 私も知りませんでした。

なんとも穏やかな鈴木老師



 鈴木俊隆(以下、鈴木老師)は、1960年代にアメリカ西海岸で禅を広めたお坊さんなんです。1959年に渡米し1971年にアメリカで亡くなった、曹洞宗僧侶の鈴木老師。実は日本ではほとんど知られていません(同じ鈴木でも、鈴木大拙のほうは有名なのですが)。

 先日、鈴木老師の教えをまとめた洋書の邦訳『禅は、今ここ。―Zen Is Right Here』(デイビッド・チャドウィック編著、サンガ刊)が出版され、刊行記念トークショー&坐禅会に行ってみました。

まずは、英語で説法をする鈴木老師の動画が流されました。
⇒【動画】http://joshi-spa.jp/83632
(C)San Francisco Zen Center archives.

 なんとも穏やかで、思わず手を合わせたくなるでしょう? ちょっと笠智衆ぽいですよね。

 トークショーでは、曹洞宗僧侶の藤田一照さんが、鈴木老師について解説してくれました。藤田さんはアメリカに18年間滞在して、禅の指導をしてきた人で、鈴木老師の間接的な後継者と言えます。

アメリカで禅が流行った理由



 1960年代、アメリカ西海岸でカウンターカルチャーというムーブメントが起こります。簡単に言うとヒッピー文化です。

 当時、アメリカは経済的には世界一豊かな国になったけれど、どうも幸せになった気がしない。ベトナム戦争に突っ込んでいくなかで、「何か間違ってるんじゃないか?」という疑問を持った若者たちは、東洋思想やら精神世界やらLSDやらに目を向けます。その一つが禅で、鈴木老師のもとに彼らが集まるようになったそうです。

 当時の雰囲気がわかる動画があります。1967年、カウンターカルチャーのエポックメイキングなイベント「Human Be-In」の様子で、アレン・ギンズバーグやティモシー・リアリーなどキラ星のような人たちが映ってします。なんとこの場に鈴木老師もいたそうで、3分10秒あたりから、一瞬、鈴木老師が映ります。

⇒【動画】http://joshi-spa.jp/83632
Jerry Abrams – Be In (1967) Music By Blue Cheer

(スチール写真⇒http://www.cuke.com/photos/be-in.html

 藤田さんによると、1960年代アメリカのヒッピーさんたちにとって、「spontaneous(スポンティニアス=自然である)」がキーワードだったとか。鈴木老師の姿は、まさにspontaneous ですよね。

「自分」というアイデアをなくしてみる



『禅は、今ここ。―Zen Is Right Here』は鈴木老師の教えと逸話が120ほど、短い英文&和文で紹介されています。最初の1ページ目はこれ。

「ある朝、鈴木老師は私たちが坐禅しているときに、即興で短い話をされました。『あなた方は誰もがそのままで完璧である……、でもほんの少し進歩することができる』」

 藤田さんの解説を要約しますと……(< >内)。

<坐禅に来る人は「自分には何かが欠けている。努力によって、鈴木老師のように自然になりたい」と考えている。でも、「自然であろう」とすれば、それはもう自然ではない。とはいえ、何もせずに「ありのまま」でいいわけでもない。ではどうするか?>

 そう、単に「ありのままでいいんだよ」ってな話ではないんです。

<私たちは、目的を決めて、なるべく効果的に努力すれば、努力の成果が自分に返ってくると思って生きている。その「自分」というアイデアをいっぺんなくして(without any idea of the self)、何らかの目的のためではなく、ただ坐ってみたらどうだろうか>

 坐禅に興味があれば、藤田さんの著書『現代坐禅講義―只管打坐への道』(佼成出版社)がとってもオススメです。

左が藤田さん、右が『禅は、今ここ。』の訳者でサンガ社長の島影透さん。このイベントも盛況でした

 ただし、仏教にもいろいろありまして。インドで生まれた仏教が中国に伝わって、7世紀頃に中国で生まれたのが禅宗です。だから老荘思想の「無為自然」という概念がかなり影響していて……なんて話は、長くなるのでやめておきましょう。

<TEXT/女子SPA!編集部>

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