その後、その恋人とは破局。相次いで子どもたちが独立し、ミキコさんはひとりになった。そんなとき知り合ったのが今の恋人である。同世代のバツイチで、知り合ってすぐに意気投合、一緒に住み始めて1年になる。

「彼は私が離婚未成立だと知っているけど、『
別にそんなのどうでもいいよ』と。形より中身が大事という人で、そこは意見が一致しています。財産があるわけでもないし、今のところはいいかと思っていますが、今後、どちらかが病気になったときに手術の同意書が書けるのかとかお墓をどうするかとか、いろいろ問題は出てきそう。だからせめて内縁関係であることを公正証書にしておくなどの準備は必要かなと思っています」
別居も長いので裁判に訴えれば、おそらく離婚は認められるはずだが、ミキコさんは「離婚したくない」という夫の気持ちも尊重したほうがいいような気がするとつぶやく。
「私は婚姻届にそれほど意味があるわけではないと思っているけど、離婚届を書きたくないと夫が言うなら、それはそれでいいかな、と。何が彼をそこまでさせているのかわからないけど。ただ、夫は今の私の恋人にも会っているんですよ。ふたりはそこそこ親しくなっているようです。人間ってよくわからないものですね」
婚姻届も離婚届も、人によっては意味がないし、その逆もある。大事なのは、今、自分が誰を大切に思って誰と一緒に生きていきたいかだとミキコさんは言う。
離婚しないうちに他の人と同居と聞くと、「不倫」というカテゴリーに入れられてしまう話ではあるが、よく聞けばこれはもう別の愛がしっかり根づいているわけで、むしろ離婚に同意しない夫のありようが不思議にさえなってくる。
価値観は人によって違う。安易に「これって不倫でしょ」とレッテル貼りをすると本質を見誤る。
<取材・文/亀山早苗>
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【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数