「杉田議員も安倍総理も許せない…」ある不妊治療中の女性の涙
月刊誌「新潮45」の8月号における衆議院議員・杉田水脈氏の、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」という文章に端を発した一連の騒動。新潮社は「新潮45」の休刊を決定するも、同社や編集部によるLGBT当事者への謝罪は未だありません。
そして、新潮45の記事で傷ついたのはLGBTの人たちだけではありませんでした。
「『生産性がない』という言葉が、自分のことを言われているようで、涙が止まりませんでした」
そう語るのは東京都の主婦・海堀美穂さん(仮名・32歳)。彼女はIT企業に勤める男性と5年前に結婚しました。性自認は女性で、恋愛対象も男性のみ。それでは、なぜ彼女は「自分が責められている」と感じたのでしょうか。
海堀さんはもともと、理学療法士として関東の病院で勤務していました。職場の雰囲気や同僚との仲も良く、楽しい日々を過ごしていたそうです。そんな彼女には一つ悩みがありました。旦那さんとの間に子どもができなかったのです。
「タイミング療法や人工授精といった不妊治療を、お休みなどを挟みながら3年ほど続けていたのですが、子どもを授かれませんでした。休みを挟みながら治療をしていたのは、仕事との両立が難しかったからです。
不妊治療は自分のバイオリズムに合わせて治療をするので、必ず仕事が休みの日に病院に行けるわけではありません。結構な頻度で職場を遅刻・早退する必要がありました」
職場の人たちは優しく、近い人たちには不妊治療のことを伝え、理解もしてくれていたそうです。ただ、海堀さんの職場には実際に子どもができて産休に入る人もおり、子どももできていないのに遅刻・早退を繰り返すことに負い目を感じていたといいます。
「今の治療法では効果がないので、自宅から電車で1時間半以上も離れた場所にある体外受精専門クリニックに転院することにしました。職場の遅刻や早退がさらに多くなることが見込まれたので、同時に退職することにしました」
海堀さんは好きだった仕事を辞めて、治療に専念することにしました。治療費が今までより増えることに加え、夫の収入しかなくなったことに大きな不安もありましたが、新しいクリニックの治療のかいあって、子どもをついに授かりました。しかし……
「やっとの思いで宿った命が、妊娠3カ月目の最後で亡くなってしまったのです」
海堀さんは疲れきってしまった。
「不妊治療は長い棒のような器具を体内に入れることもあり、精神的に辛かったです。そして、お腹の子どもも亡くなってしまい、心身ともに疲弊していまいました。そこで、東北の田舎に一度帰ることにしました」
田舎に帰れば親戚や知人からは「子どもはまだなの?」などと聞かれる気はなんとなくしていました。それでもちょっとだけでもいいから、現実から離れたかったそうです。そんな帰省中に目の当たりにしたのが杉田議員の寄稿にまつわるニュースでした。
海堀さんはインターネットで記事の詳細を調べた。調べれば調べるほど、涙がでてきたといいます。
「子どもを産めない自分は、社会における生産性のない人間なのか。悔しくて、悔しくて、実家のベッドで、マットレスをグーでひたすら叩きながら、声をだして泣きました。自分だって子どもはほしいのに、どうしても産めない。それでも生産性がないとなんで言われなくてはいけないのか」
彼女はひどく落ち込み、ふさぎ込んでしまったそうです。その後、土日に旦那さんが自分の実家にきてくれて、ゆっくり会話したら、少し前を向けるようになったとのことです。
「あの記事で一番辛い思いをしたのは、私ではなくてLGBTの人たち。私はなかなか子どもができないといっても可能性がゼロなわけでもない。あんなチープな記事に負けてはいけないと思いました」
彼女は杉田議員、そして自民党総裁の安倍晋三総理に怒りを抱いています。
「とある討論番組で、安倍総理が杉田氏の寄稿について『(彼女は)まだ若いから』と擁護しました。彼女は51歳です。私は混乱しました」
そもそも若いからといって、国会議員には違いなく、何を言ってもいいはずがないでしょう。ただ、彼女が最も疑問に思ったのは安倍総理が51歳の女性を「若い」と称したことでした。
「51歳といえば、子育てもひと段落してくる世代かと思います。仕事、結婚、育児などさまざまな経験を経て今の杉田氏がいるのだと思います。それを『君、若いから、もっと勉強して次は気を付けてね』って……。
例えば、50代の男性政治家が同じような問題発言をしても安倍総理は同じように擁護するでしょうか。それで世間は納得するでしょうか。女性をバカにしているとしか思えません」
そもそも、若すぎて発言に対する責任も持てないような人をなぜ比例代表の中国ブロックで単独一番手にしたのか、仮にも自民党はそうやって彼女をここまで押してきたのだから、「若いからしょうがない」と言い訳するのは有権者に対しての裏切りではないか、と海堀さんは安倍総理の対応に怒りを募らせています。
そして最後に杉田議員に対して次のようなメッセージを送っています。
「杉田議員。私はあなたが書いた記事を許せない。けれど、せめて安倍総理には怒ってほしいです。あなたは彼にバカにされている。なぜそれを許すのですか。もしここで安倍総理への忠誠を捨てないのであれば、あなたは全女性の恥だと感じます」
<文/田中浩二>
「自分のことを言われているようで涙が止まりませんでした」


杉田議員が許せない。そして、女性をバカにしている安倍総理も

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