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早くなくなんないかな、戸籍制度/内田春菊

家庭裁判所のカウンターで紙にただ黙々と書いた

裁判所 が、その3回目の夫と離婚するとき、4人に増えた子を「○○家」から引っ張り出して私の戸籍に入れようとしたら!  養母用の用紙がないのです。  つまり、連れ子を連れて結婚していただいたような女が、また離婚して自分の籍に子を連れ出すような状況を届けるのに、印刷に値するような紙はねえ(当時)と。夫がヒモでも(しつこい)。  家庭裁判所のカウンターで手書きしました、「養」の字を。養母が籍から抜け、新しい自分の戸籍に養子や実子たちを招き入れる旨を。  今はどうか知らないが、離婚女性が子を自分の籍に入れる手続きも、家庭裁判所まで行かないと出来なかったという記憶になっている。 「面倒くさくてすみませんね~」  と担当のご婦人は優しく微笑んでいた。その人に怒ってもしょうがないのでただ黙々と書いた。
内田春菊『あなたも奔放な女と呼ばれよう』 講談社文庫より

内田春菊『あなたも奔放な女と呼ばれよう』 講談社文庫より

早くなくなんないかな戸籍制度

 こうして私の戸籍制度嫌いはすっかり出来上がり、インタビューなどに「長男」とか「長女」とか私が言ってない戸籍用語が書いてあると、直していただくようになったのです。  自分の夫を「主人」と呼んでいる女性がいると、ここでは話題に注意しよう、と身を固くしたりもする。夫がヒモじゃないからこそ自然に出るんでしょうしね。私の知らない世界。恋愛もやめたからもう知ることもありません。  あまり政治的なセンスもないのでただぼんやりと祈るだけです。早くなくなんないかな戸籍制度。 <文&イラスト/内田春菊> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
内田春菊
漫画家、小説家、俳優、歌手。1984年漫画家デビュー。1994年『私たちは繁殖している』『ファザーファッカー』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。最近では自身の大腸がん・人工肛門の日々を描いた『がんまんが』『すとまんが』で大きな反響を集める。『ファザーファッカー』を実母の目線で描いた『ダンシング・マザー』を2018年に発表。
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