ヤフオクでは“購入失敗品”を狙え!【シングルマザー、家を買う/13章・後編】

⇒【前編】はコチラ  詳細ページを開くと、どうやら新居の洗面所を置く場所と洗面台のサイズが合わなかったらしい。そこで私は“返品すればいいのに”と純粋に思ったが、出品者は鏡と収納棚がついた上段はそのまま使用したいので、下段だけ売りたいと言う。私にはその状況がよくわからないが、出品者がそう言うなら、そういうことなのだろう。それだけ上段が気に入ったようだ。  その瞬間、私は下段の気持ちになり、切なくなった。上段は新居でしっかり使用されるというのに、下段は売り飛ばされようとしているのだ。洗面台にもいろんな人生があるもんだ。  すぐに感情移入してしまう私は、この時点で、この子をどうにかしてうちの養子に……と思いはじめてきた。 ヤフオクの洗面台 それにしても、この洗面台の物語を読む限り、たしかにタイトル通りの“購入失敗品”である。セット商品を半分にぶった切った状態のものを欲しいという人はなかなかいないようで、出品から時間が経っているにもかかわらず、入札が入らない。

購入失敗品はお買い得品

 それを踏まえてか、コメントには「値下げしました」の文字が追加されている。薄暗い写真では全体像がよくわからないので、詳細ページに記入してある品番をコピペして検索をかけてみると、なんとこの洗面台はパナソニックの2010年最新型ではないか! シャワーノズルもあり、温水も出る。収納は2段の引き出し型……。言うことない! よし、即決しよう!  そこに書いてあった金額は、なんと1万円。え、1万円!? 予算より4万円も安い! 洗面台ってそんな値段で買えるのね! さすが、購入失敗品! 出品者、謙虚すぎ! もう感謝しか生まれない。しかも、あと2時間で終了ときたもんだ。「落札する」のボタンをポチリとし、無事2時間後、この子を養子に迎えることになったのだ。  落札後、すぐに送られて来た出品者からのメールには、「落札していただき、本当にありがとうございます。処分に困っていたので助かりました」と書いてあった。いや、感謝したいのは私のほうだ。捨てる神あれば、拾う神ありとはまさにこのことだろう。  あまりにスムーズに、しかも安価に洗面台をゲットできた私は、すでに完全に調子に乗っていた。この調子でシステムキッチン、手に入れちゃうぞ! と意気込んでいた私は、本家のシステムキッチンで、オークションの厳しさにぶち当たることになることを、このときはまだ知らないのだった。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky) ※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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