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“う○こ”との負けられない戦い【シングルマザー、家を買う/14章】

<シングルマザー、家を買う/14章> バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。 (前号までのお話) 設計士から洗面台やキッチンなどを「ヤフオク!」で購入することを勧められ、まずは洗面台を1万円で落札することに成功。気をよくしたシングルマザーが次に狙いを定めたのは、システムキッチンだった。

合言葉は「できるだけ安く」

 システムキッチンを手に入れるために、まずはちっちゃいおじさんの大工さんに予算を確認した。  リフォームにかけられるお金は全額で250万円。そこから設計費や壁紙代、天井のペンキ代などはもちろん、洗面台やキッチン、お風呂やトイレを購入するお金も捻出しなくてはならない。さらに大工さんに支払う施工費(設置費用含む)があるので、高いキッチンを購入しては、施工費まで回らなくなるのだ。  そこでおじさんが出した答えは、「できるだけ安く」ということだった。もはや、いくらとかではない。できるだけ安く。  とはいえ、その基準がわからないので、「一体いくらくらいですかね?」ともういちど聞くと、肩に手を置かれ、落ち着いた声でこう言ったのだ。 「できるだけ、安く」  ……同じ言葉だ。そうか、それだけ予算がないんですよね、私。もう! 本当に、何をするにもお金がかかる! シングルマザー、家を買う しかし、私の心には少しの余裕があった。前回、洗面台を安く手に入れられた私は、完全に調子に乗っていたのだ。またヤフオクにログインさえすれば、すぐに理想のキッチンを安く落札できるとタカをくくっていたのだ。

80万円のシステムキッチンが1000円!

 そして、その夜。決戦の火蓋は切って落とされた。  子供が寝付いた22時ごろ。前回と同様、ヤフオクのページを開き「システムキッチン」で検索すると、そこには夢のようなシステムキッチンの写真がずらりと並んでいる。その数なんと1000件あまり。  そこで私は大工さんの顔を思い出し、10万円以下で検索をかけなおした。すると、なんと1000件あったうち、30件しか残らないではないか。あまりの厳選っぷりにビックリする。仕方ない、これが現実だ。  イヤ、これくらいの絞込みがないとそうそう選びきれないはずだ。そう考えを切り替えて、私はそのなかから1000円のシステムキッチンを見つけだした。  うん、安い。  なぜこんなに安いのだろう。写真も美しいし、独立型といい、引き出し型といい、本当にすばらしいのだ。  しかし、説明をよく読むとどうやらこのキッチンは、展示品として使われていたらしい。ショールームなどで展示されていたという過去があるだけで、それらの商品は中古品になるのだ。でも、私にしたらそんなことは何の問題もない。むしろ大歓迎である。  しかも、定価は80万円! 残りの79万9000円は一体どこにいったのだろう! あまりの安さに興奮と喜びを抑えきれなくなっていた私は、すぐに入札を開始した。このとき、時間は23時。残りの日数は3日だった。

“う○こ”との負けられない戦い

 翌日、ワクワクしながらヤフオクのページを開くと、入札したキッチンの最高入札者は私ではなくなっていた。そこで目にした名前は、「unk*******」。え? 誰これ。  現在ヤフオクは落札者のIDが頭から3文字しか表示されないため、その全貌がわからないが、私にしたらもうこれはローマ字読みをしての“う○こ”にしかみえない。下品で申し訳ないが、このオークションに敵として浮上した以上、そうなることは仕方ない。  これは絶対に負けたくない! そこで負けず嫌いの私は、すぐに入札することにした。その額、3万円。当時すでに1万円まで跳ね上がっていたが、いきなり3万円を入札すれば相手は怖気づくだろうと考えたのだ。その後、反応が何もないことに安心しつつも、その日はドキドキしながら眠りについた。  さらに翌日。夜にヤフオクを開くと、私の狙っているキッチンは5万円まで値上がっていた。繰り返すが、相手の名前はう○こ(実はもっと素敵な名前かもしれないけど、もはや私にはう○こにしか見えない)。そんなナメた名前の人に負けるわけにはいかない!  そこで私は思い切って8万円まで入札した。落札期限は明日の22時。もう、眠れない。しかし、ヤツはその夜活動していないようで、決戦は明日に持ち越された。 ⇒【後編】「オークションは人を狂わせる」に続く http://joshi-spa.jp/225941 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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シングルマザー、家を買う

年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える!

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