『美食探偵』で輝く“ドS”小池栄子。その罪深き女優・伝説とは?
小池栄子は罪深い女優である。
「俺の話は長い」(日本テレビ系)ではさばさばしたじつに庶民的な主婦(生田斗真演じる主人公の姉)を演じていたかと思えば、現在放送中の「美食探偵 明智五郎」(日本テレビ系)では、まさに“罪深い女”マグダラのマリアと名乗る妖艶な殺人鬼を演じている。この役が凄まじい。
もともとは平凡な主婦だったマリアは、ドラマの主人公で探偵の明智五郎(中村倫也)に「自由になれ」と言われ、その気になって、浮気している夫の首を掻(か)っ切ってしまうのである。そのとき返り血を浴びた小池栄子がおそろしくも美しかった。
心の中で抑えていた欲望を解き放ったマリアは殺人鬼となる。でもそれはどうやら明智の気を引きたいからで……。まばたきしない大きな瞳と尖りすぎないほんのすこしだけツンとした鼻で真っ直ぐ見つめられるとロックオンされてこのままぺろりと食べられてしまいそうな魔力がある。
映画「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」では浮気者な主人公(大泉洋)を助ける、ぱっと見は絶世の美女だがじつは大食いでガサツという役で、これが小池栄子にピッタリ。
舞台版(15年)でも演じていたから当たり役と言えるだろう。胸も大きいけどギャップも大きなところが大変罪深いと思う。

小劇場の街・下北沢のゲームセンターを営む家に生まれ育った小池栄子、クレバーな人だとは思うが、根っこは庶民的な女性だと思うし、バラエティー番組や番宣番組などに出ているときは共演者を立てる感じいいヒトという印象である。これはドラマ「リーガルハイ」や映画「記憶にございません」(18年)のてきぱきと有能な秘書役と近いものを感じる。
小池栄子の罪深き女優・伝説は「恋愛寫眞」(03年)に出た頃からその兆しが見えていた。
97年にグラビアアイドルとしてデビュー。いわゆる爆乳で男性人気を博したが、その一方で、着々と俳優活動も行って、00年代のはやいうちから、舞台などにも出て研鑽(けんさん)を積んでいた。
「恋愛寫眞」では広末涼子演じる主人公の気のいい女友達に見せて実は……という意外性のある役を小池栄子は体当たりで演じた。同年「2LDK」はルームシェアしている女性(野波麻帆)と表面上仲良くしていたのがやがてキャットファイトを繰り広げるというもので、女友達の意外なコワさというものをこの頃から演じていたのだけれど、小池栄子のボリューム感を全面に出していくのではなく、彼女をあえて小さく見せて、「抑圧」や「従属」という要素を加えたときから、小池栄子はがぜん輝き始めた。
胸も大きいけどギャップも大きなところが大変罪深い

バラエティーでの印象は「リーガルハイ」などの役柄に近いが…
プロレスラーの奥さんというのもなんだか親しみがもてる。だが小池栄子が現在の小池栄子の地位を獲得したのは、罪深い女を演じるようになってからといえるだろう。「記憶をなくした総理大臣にしか出来ないことだって、あると思うんです」
— 映画『記憶にございません!』 (@kiokunashimovie) 2019年9月21日
黒田総理のトップシークレットを知る1人・番場のぞみ(#小池栄子 さん)。その熱くまっすぐな性格ゆえの苦労も数知れず…#記憶にございません!#記憶に残るセリフ pic.twitter.com/EB0UQHcMQ4
「抑圧」や「従属」という要素を加えたときから、がぜん輝き始めた

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