『美食探偵』で輝く“ドS”小池栄子。その罪深き女優・伝説とは?
「接吻」「八日目の蝉」での狂おしい人物が現在まで大きな影響
映画「接吻」(08年)で、小池は平凡な独身OLを演じた。彼女はテレビで視たとある殺人事件の容疑者に心惹かれ、思いが行き過ぎた結果。とんでもない行為に及んでしまう。その後、「八日目の蝉」(10年)では不倫相手の子供を誘拐して逃亡する女の業を見つめる役を演じた。
この2作で小池栄子は俳優として高い評価を獲得し、数々の映画賞を受賞。この2作がいまもなお彼女の俳優として大きな影響を及ぼしているように思える。
例えば、「接吻」は「美食探偵~」のマリアのイメージと少し重なる気がするし、「八日目の蝉」はドラマ「母になる」(17年)で、他人の子を自分の子として長年育て、実の母と出会って葛藤する役とも相通じるところがある。
これらはみな、自分を押し殺して生きてきて、ある瞬間、爆発してしまう役である。そして自分の思いに正直過ぎるほど正直になった結果、大事なものから離れられなくなってしまう。自由なようで囚われてしまう狂おしい人物たちである。思えば、漫画原作の「二十世紀少年」の第2章と第3章(09年)の執念深そうなクレイジーなおばちゃん高須役も似合っていた。
女王様でありながら同時にスレイブ(奴隷)であるという両義性
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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