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「JIN」「テセウスの船」「光源氏くん」に見る、タイムスリップものの魅力とは?

 新型コロナウイルス感染防止のためのおこもりで、テレビドラマの再放送や配信を見続ける日々。そんななかで土日に再放送している「JIN-仁-」(TBS系)は10年ほど前の作品ながらいまなお胸を打つ。
「JIN-仁-」(C)TBS

「JIN-仁-」(C)TBS

「JIN-仁-レジェンド」とした特別編が関西(毎日放送)でも再放送が決まった。「JIN」は現代の医師・南方仁(大沢たかお)が幕末の江戸にタイムスリップ。そこで感染症や癌など重病を現代医学で診ていく。当時より圧倒的に進んだ医学を心得た仁が病を治してしまったら未来が変わってしまうかもしれないと心配しながらも、目の前の生命を見捨ててはおけない主人公の人間愛。  感染症のエピソードはタイムリー過ぎるのと「神は超えられる試練しか与えない」というメッセージがいまの私たちの励みになるというのが表向きの人気のヒミツだけれど、優しさに溢(あふ)れた大沢たかおの演技が絶頂期なのと、坂本龍馬を演じている内野聖陽のギラギラ感との相乗効果で女性ファンのハートを掴みまくっていることも重要ポイントなのである。  時空を超えて、生命の大切さに向き合う大沢たかおを綾瀬はるか(仁の助手役)のように支えたい。幕末時代を颯爽(さっそう)と駆け抜ける内野聖陽、しびれる。どちらも知性派でありながら、紳士的な現代人・大沢たかお、ワイルドな歴史人・内野聖陽。違った魅力が堪能できるのである。

「テセウスの船」も。現代人が昔にタイムスリップでヒットのパターン

 本放送当時も高視聴率だった「JIN」。たぶん、これが、幕末を舞台にした医療ものだったら、ここまで盛り上がらなかったと思う。現代人が昔にタイムスリップするとヒットするのは、ついこの間まで放送されていて高視聴率を獲得したヒューマンミステリー「テセウスの船」(TBS系)もそのパターンを踏襲している。
(画像:『テセウスの船』TBS公式サイトより)

(画像:『テセウスの船』TBS公式サイトより)

 主人公(竹内涼真)が自身の子供時代・昭和にタイムスリップ。表向きは、殺人容疑をかけられた父の無罪をはらすミステリーながら、並行して、いまの時代では失われつつある、昭和にまだあった家族のあたたかさを再認識する物語であった。いまの時代、いきなり昭和の家族を描いてもピンと来ないが、主人公が過去に戻ってそれに触れるというワンクッション置くことで、あら不思議、家族愛がちょっとお高い暖房器具のようにじわじわと体の芯まで温める。現代人役の竹内涼真が、お父さんで昭和人役の鈴木亮平の熱血に次第に影響されていくところも面白さであった。

「アシガール」日常を忘れられる設定であるところが良い

『アシガール』DVD

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 現代の視点で過去を見ることで、何か新しいものが見えてくる。現在、再放送中の「アシガール」(NHK総合 金曜よる10時)も平成の女子高生(黒島結菜)が戦国時代にタイムスリップ。そこで出会った凛々しい若君(健太郎。現・伊藤健太郎)に恋をして、歴史上では戦で生命を落してしまう彼を救いたいと足軽として奮闘する。ふたりは歴史を塗り替えてハッピーエンドを迎えるのか否かとドキドキが止まらない。  これもまた、ふつうに戦国時代の武将と農民の身分違いの恋物語であったら、これほどドラマチックに盛り上がらないであろう。現代のJKが、戦国武将の涼やかな勇ましさに夢中になってしまうところがポイント。現代だと、馬に乗せてもらうなんていうシチュエーションはなかなかない。こういう日常を忘れられる設定であるところが良いのである。
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