借金してまでホストに通う女性の多くが抱える“共通点”。「生活できなくなる」と考えられないワケを医師が解説
つい最近まで普通に暮らしていたはずなのに、いつの間にか借金まみれ――。
近年、自身や家族がホストにハマる“ホス狂い”や自分を犠牲にして恋愛対象者を最優先してしまう恋愛依存症などに陥り、日常生活が破綻してしまう人たちについてメディアでも多く取り上げられています。それは、つい最近まで普通に暮らしていたはずの人たち。
どうしてそのようなことになるのか、そのメカニズムについて、依存症治療に30年以上携わる医療法人社団 祐和会「大石クリニック」院長・大石雅之先生に話を聞きました。
大石先生は多くのメディアでホスト依存などの取材に応えるほか、本人・家族からの相談に日々耳を傾け、運営する4か所のグループホーム(回復施設)も活用しながら患者それぞれが治療に専念できる環境を提供しています。
――誰にでも、何かにハマってしまう経験はあると思います。“依存症”と診断されるにはどこからがボーダーラインで、具体的にはどのような症状が出るのでしょうか?
大石先生:実は、“依存症”というのは病名ではありません。医学的定義では、アルコールや薬物など特定の物質、ギャンブルやパートナーへのめり込むなどの行動に対して自分をコントロールできない状態に陥ってしまうことを依存症といいます。
――「やめたほうがいい」とわかっているのにやめられない、学校や仕事などの日常生活がそっちのけになったり借金を重ねたりしてでも恋愛対象者などを最優先してしまう。メディアなどでもよく報じられている印象そのままですね。
大石先生:そうそう、「ダメだ」「よくない」とわかっていても自分で自分を抑えられない状態。そういう状態を依存症といいますが、ホストに入れ込む“ホス狂い”や自分を犠牲にしてまで恋愛対象を最優先してしまう“恋愛依存症”は、ギャンブルやアルコールの依存とは大きく異なります。
――同じ依存症といわれるものなのに、大きな違いがあるのですか?
大石先生:ギャンブルやアルコールは、偶然的です。パチンコ店へ行ってたまたま勝ったり、お酒を飲んだら自分にすごく合っている感じがしたりしてハマってしまう。でも、ホス狂いや恋愛依存症によって借金や売春までして貢ぐ深刻な状況に陥る人たちのほとんどは、疾患を抱えています。これが、ほかの依存症との大きな違いです。
――ホストや恋愛対象者に依存してしまう原因には、疾患があるということですか?
大石先生:もともと抱えている疾患が問題を大きくしています。その疾患というのが、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害、痴漢・盗撮などの性犯罪を繰り返したり社会的に問題につながる行為をしたり、性交渉や風俗の利用回数が極端に多くなったりする性嗜好障害や強迫的性行動症などです。こういった疾患がない場合、最初に何万という金額をホストに提示された時点で「毎回これだけかかるなら、生活できなくなる」などと考え、冷静になります。
――なるほど。でも、無理やり風俗を紹介されたり売春を強要されたりしてまでお金をむしり取られたといった報道も多いように感じます。
大石先生:そういうケースもなかにはあるかもしれませんが、いくらホストや恋愛対象者が「風俗行け」「体を売ってこい」と言っても、無理やりそういうことを本人にさせるというのは現実的には難しいものです。