――どうして、対処しきれないトラブルに直面するまで自分の疾患に気づきにくいものなのですか?
大石先生:絶対というわけではありませんが、疾患を抱える子の親は、同じように疾患を抱えている可能性が高いことがわかっています。その場合、同じような思考だったり行動を取ったりすることも多い。するとどうしても、周囲との違いに気づきにくくなってしまいます。
――なるほど……。
大石先生:周囲から「ちょっと変わってる」「天然」「KY(空気が読めない)」などと言われてもそれが問題になるようなこともなく、まわりも自分自身も、まさか疾患を抱えているとは考えず大人になるまで過ごすケースも多いです。
――幼少期に気づくとすれば、通っている保育園や小学校などで先生から診察を勧められたときぐらいでしょうか?
大石先生:そうですね。ただ、親が疾患を抱えているとアドバイスを受け入れられないなど、診察に足が向かないケースもあります。
――社会人になるまでに何度か疾患に気づくポイントがあるとはいえ、なかなかハードルが高そうです。疾患を知らずに生活を続けることは難しいでしょうか?
大石先生:世の中には、気づいていないだけで発達障害などの疾患を抱えていると考えられる人もたくさんいます。そして問題にならないどころか、その道を極めて称賛される人だっているわけです。たとえば、好きだからと毎日同じものを1日3回食べ続けられる人や同じことをずっとやり続けられる人。そういった人が必ず疾患を抱えているわけではないので誤解しないでほしいのですが、興味や活動の偏りといった特徴が当てはまります。
――「どういったことに興味を示すか」「どういった活動をするか」、ということがカギになってきそうですね。……ということはやはり、自分の疾患について知っておくことは大事?
大石先生:疾患があるとわかれば、視野の狭さや認知のゆがみを治療によって改善することもできます。そうすることで視野が広くなって選択肢が増え、自分の興味や行動が将来にどのような影響を与えるのかを冷静に判断しやすくなります。「まわりに馴染めていない気がする」「いつも孤独に感じる」など気になることがあれば、まずは相談してほしいです。
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自分自身や家族など身近な人が何らかの疾患を抱えているかもしれないと考えると、不安に感じる人のほうが多いのではないでしょうか。ただ、治療することで視野が広がり、ポジティブな思考や行動につなげられるなら、いまよりも毎日が生きやすくなるかもしれません。
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大石雅之】
厚生労働省より「依存症専門指定医療機関」や「通院医療機関」として指定を受けているほか、神奈川県警察より「ストーカー加害者の精神医学的治療等指定医」としての委嘱も受けている医療機関、医療法人社団 祐和会「
大石クリニック」の院長。依存症治療に30年以上携わり、多くの依存症患者と向き合う日々を送っている。
<取材・文/山内良子>
山内良子
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。