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バービー「『嫁』という言葉を嫌う人がグッと増えた」。清田隆之らと語る“男と女の現在”

 今までに1200人以上の男女から恋愛相談を受け、恋愛や性差の問題について発信し続けてきた恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さんが、自らが抱える「男らしさ」への葛藤と正面から向き合った本格的ジェンダー・エッセイ集『さよなら、俺たち』を刊行しました。
さよなら、俺たち1

右から清田隆之さん、おぐらりゅうじさん、バービーさん

 刊行を記念して代官山 蔦屋書店で7月に開催された、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーさん、フリー編集者のおぐらりゅうじさんをゲストに招いたオンライントークイベント「清田隆之×おぐらりゅうじ×バービー このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ――2020年の男らしさの行方と現在地」を記事にまとめました。 さよなら俺たち

「俺たち」と「俺」とのあいだ

バービー:新刊発売おめでとうございます。 清田隆之(以下、清田):ありがとうございます。 バービー:今朝届いたので、まだ全部は読み切れていないんですが、帯の最後のほうに「『俺たち』から『私』という個人への脱皮を目指すためのプロセスと言っていいかもしれない」と書いてあるじゃないですか。これって、「俺たち」という男同士の仲間意識を重視して、大きな主語で自分のことを語ろうとする人と、「俺」という個人として自分について捉え直そうとする人との戦いが、男性同士の中で起こっているということなんですか? 清田:戦いというニュアンスはないんですが、今まで「俺たち」という大きな主語に安住して、自分の持つ男らしさや、男性ゆえの優越性、性差別意識に対して無自覚に生きてきた男性が、個として自分を捉え直すことで見えてくるものがあるんじゃないかと思ったんです。
清田さん

「男性が個として自分を捉え直すことで見えてくるものがあるんじゃないか」(清田さん)

バービー:これまで、ジェンダーについて議論するときって、女性同士やいわゆるフェミニスト女性 VS 男性という対立はあったけれど、男性内での対立は私は聞いたことがなくて、そういう話をされているのかなって。

「ウチの嫁が」に疑問を持たない男性たち

清田:僕、趣味で草サッカーをしているんですけど、チームメイトは仲良しだし、いい人ばかりだけれど、家事も育児も妻任せって人が少なからずいるし、風俗やパパ活アプリの話題で盛り上がるようなノリも正直あったりするんです。そういう、妻のことを「ウチの嫁」と呼ぶことに疑問を持たないタイプの男性たちの中で、例えば「女偏に家と書く『嫁』という言葉は男尊女卑だ!」なんて言ったとしてもポカーンとされてしまうし、ジェンダー意識に関する断絶はあるかもしれない。 バービー:確かに。それで疑問を持たない人たち、いますもんね。 清田:一方で、SNSを見ていると、自分が身を置く出版業界や、わりと近しいエンタメ業界などでも性差別的意識が露呈して炎上案件が起きたり、今や芸能人も政治家も性差別的な発言で立場を失うことがあるじゃないですか。世の中の潮流として見ると、男性もジェンダー意識を見つめ直したり、丁寧に言語化したりする努力が必須の時代になってきたという感覚があります。でも一歩そこから外に出てコミュニティが異なる友人と接してみると、そんなの全然関係ねぇという世界がある。 おぐらりゅうじ(以下、おぐら):「全然関係ねぇ」という人もいますし、そもそもそういったジェンダーの議論が情報として届いていない、っていう人の数も多いですよね。僕は『テレビブロス』という雑誌の編集部にいて、芸人さんを取材したり、バラエティ番組の特集を担当することが多いのですが、やっぱりお笑いの世界はまだ「俺たち」的なものが強い社会なんですよ。とはいえ、世の中の動きには敏感な人も多いから、どこかではその潮流に気づいているとも思うんだけれど。 バービー:変わりはじめている空気感はありますよね。 おぐら:たとえば、サンドウィッチマンは2年連続で「タレントパワーランキング芸人編」第一位になるほどの好感度と人気を集めていますが、彼らも普通に「ウチの嫁が」とか言うじゃないですか。活動のフィールドやファン層によっては、そういった言葉遣いを含めてアップデートをしていないと、どんどん人気がなくなっていく可能性があるけれど、少なくともサンドウィッチマンの人気は衰えていない。 清田:お笑い芸人の男性たちって、「嫁」って言葉を使う率が高い印象ありますもんね……。 おぐら:ハラスメントが明らかに実在するところは絶対に直すべきだけど、「嫁」と呼ぶこと自体が明らかなハラスメントかというと、それは相手にもよるし、思想の問題でもあるとも言えるので、レイヤーがひとつ違うのかなともちょっと思いますよね。  たとえば、芸人さんが、「このジジイ!」「ハゲ!」「ババァ!」とか言うときの切れ味ってすごく強いじゃないですか。でも、そういう言葉はもう使うべきではない、ということが共有されてきた今は、それに代わる切れ味の鋭い言葉を開発しなきゃいけないフェーズだと思います。でも、これまでずっと使ってきた鋭い切れ味の武器を手放してまで、新しい言葉を開発していくのはなかなか難しいんだろうなと。
おぐらさん

「使うべきではない言葉に代わる、新しい言葉を開発しなきゃいけないフェーズだと思う」(おぐらさん)

バービー:私、ちょうど「バラエティといじり」をテーマにしたコラムを7月の『FRaU』の連載で出したんです。それでエゴサしてたら、毒舌で知られる毒蝮三太夫さんが「まだ生きてたのかババァ」みたいなことを言えない世の中の流れに悩んでいるらしいという情報が出てきて。さすがに今までそれでやってきて、芸風が受け入れられている人は、さじ加減がわかっていれば続けてもいいんじゃないかと、エンタテインメントの側から見て勝手に思ってしまったんです。でも、それを聞いてギョッとしちゃう20代とかもいるかもしれない。 おぐら:そうですよね。「まむちゃん(毒蝮三太夫さん)だからいじってもいい」という考えも本質的に違うんじゃないかと思うし、世代や文化圏によって温度感も違うので、ものすごく難しいですよね。
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東野幸治のようなベテランも変わってきた
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