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バービー「『嫁』という言葉を嫌う人がグッと増えた」。清田隆之らと語る“男と女の現在”

東野幸治のようなベテランも変わってきた

バービー:確かにそういう染みついたジェンダー観って、世代によってグラデーションで変わってきている。私たちアラフォーはちょうどバランスを取りづらい世代ですよね。ちょうど揺れ動いている世代だからこそ、逆に言ったら同じ世代でも考え方に大きな差がある人もいる。
バービーさん

「ジェンダー観って、世代によってグラデーションで変わってきている」(バービー)

清田:お笑いの世界でも、変化の必要性を感じている雰囲気はありますか? バービー:その意識はここ2~3年で急カーブを描いて変わっていっていると思います。また、自粛中にテレビをよく観るようになった人が多いので、今までバラエティを見ていなかった人たちの目にも触れるようになったことで変わったこともあるんじゃないかな。  たとえば、コロナ前、コロナ後で、バラエティ番組の文脈で使われる「嫁」という言葉を嫌う人はグッと増えたと感じます。私は自分で自由に発信しているつもりでコラムに書きましたけど、東野幸治さんがラジオで取り上げてくださったらしくて。「もうこんなことを言っている場合じゃないんだ、俺たち」と(※)。東野さんくらいのベテランにまで届いているということは、ヤバいと思っている人は多いんじゃないかなと。 <※岡村隆史さんがラジオ『岡村隆史のANN』で女性蔑視ともとれる発言をし大炎上したことや、明石家さんまさんが19年8月にモノマネタレント・りんごちゃんへのオッサン発言で批判を浴びたことを引き合いに、「そういう時代ではなくなった」と価値観の変化の必要性を訴えた> 清田:東野さんのような大ベテランが言ったというのは、すごいことですね。ちょっと前だったら、「こんな言葉も言えないのかよ! 息苦しいなー」みたいな言説もあったと思うんですが、そこにはどういう感覚の変化があったんでしょうか。 バービー:確かに、少し前までは「コンプライアンスという名のもとで言葉狩りをされている」と被害者ぶる風潮がありましたが、今はプレーヤー側が意識的に空気感を大事にしている気がします。制作側はちょっとわからないですけどね(笑)、正直なところ。 おぐら:テレビ制作者は当然ながら、テレビをよく観てくれる人を主要ターゲットに商売しているわけで、今テレビをよく見ている層がどこなのかと言えば、高齢者と地方在住者です。この層は昔ながらのジェンダー規範に疑問を持たない人たちも多いので、それに対応しているテレビ制作者たちにも、まだオラオラしている人はけっこういますね。 バービー:プライドを持ってオラオラしてないとやってられない、という話もたぶんあると思うんですけど。すごく敏感に察する感じではないかもしれないですね。

ナンパYouTuberに100万フォロワーがいる現実

おぐら:テレビがマジョリティ、つまり不特定多数に向けるものだとして、倫理とか常識ベースではなく、完全ビジネスモードで利益だけを追求するならば、マジョリティの価値観に合わせることが正解になってしまう。 バービー:視聴率を重視して考えるならそうですよね。世代によっては、テレビよりもYouTubeのほうがマジョリティかもしれないですしね。 清田:YouTuberはとにかく幅が広いので、どういう基準でジェンダー意識の高さや倫理度を測るかは難しいところなんですが……女性蔑視的な動画がアクセスを稼いでいる現状は確かにある。  例えば啓蒙活動として実直な性教育動画をアップしているチャンネルの登録者数が多くて10万ちょっとな一方で(これだってものすごい数字ではあるのですが……)、「街で女性にお金をいくら渡したらラブホに行ってくれるか」「どうやったらおっぱいを触らせてもらえるか」みたいな検証動画を作っているYouTuberに100万を超えるフォロワーがいたりする。  イケメン男性グループが街でナンパして番号ゲットできるかとか、ヤリモク(SEX目的)お断りの女性を落とせるか競い合うとか、そういうコンテンツにものすごいアクセスがある現実にはちょっとクラクラします。 バービー:なるほどね。私、YouTubeは野良犬をレスキューするチャンネルしか観てないから、そういうチャンネルの存在を把握していなかった(笑)。(後編へ続く) 【関連記事】⇒東野幸治&今田耕司のアップデート発言。芸人たちの意識が変わってきた? ●清田隆之 80年、東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。『cakes』『WEZZY』『QJWeb』『an・an』『精神看護』『すばる』『現代思想』『yom yom』など幅広いメディアに寄稿。朝日新聞be「悩みのるつぼ」では回答者を務める。桃山商事としての著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)『生き抜くための恋愛相談』『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(共にイースト・プレス)、単著に『よかれと思ってやったのに─男たちの「失敗学」入門』(晶文社)がある ●バービー 84年、北海道生まれ。07年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。男女の恋愛模様をネタにした「イエス、フォーリンラブ!」の決め台詞で注目され、人気を集める。FRaU WEBにてエッセイの執筆、TBSひるおびコメンテーター、TBSラジオ「週末ノオト」パーソナリティ、ピーチ・ジョンコラボ下着をプロデュースなど幅広く活躍。女性芸人の立場から、ジェンダー問題について考察した発言や記事が共感を呼んでいる。昨年末にスタートしたYouTube「バービーちゃんねる」は、再生回数270万回超の回もあり、好評配信中 ●おぐらりゅうじ 80年、埼玉県生まれ。フリー編集者。これまでの主な仕事に、テレビ東京の番組『ゴッドタン』の放送10周年記念本『「ゴッドタン」完全読本』(KADOKAWA)企画・監修、映画『みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショーがやって来る! 「レジェンド仲良し」の秘密』構成・監督、速水健朗との共著『新・ニッポン分断時代』(本の雑誌社)など。編集を手がけた、鈴木涼美・著『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』、山内マリコ・著『山内マリコの美術館は一人で行く派展』、川田十夢・著『拡張現実的』(いずれも東京ニュース通信社刊)が発売中 <取材・文/小川知子 撮影/福本邦洋 協力/代官山 蔦屋書店>
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